八月七日の土曜日、午後六時過ぎ。
拓馬に「夏祭り、一緒に行かねえ?」と誘われたわたしは、タータンチェックのワンピースを着て、祭囃子が流れる川沿いの道を歩いていた。
道の両脇にはたくさんの屋台が出ていて、結構な人ごみだ。
浴衣姿の女性や甚平姿の男性、カップルにお一人様、家族連れ。
中には犬を抱いて歩いている人もいるし、クレープやたこ焼きを食べながら歩いている人もいる。
「ちょっと待って、拓馬」
人波に流され、先を行く拓馬とはぐれてしまいそうになり、わたしは焦った。
拓馬がわたしの声に気づいて振り返り、クレープの屋台の傍で止まる。
「早かった?」
「早かった。もうちょっとゆっくりでお願いします」
食欲をそそるクレープの甘い匂いに包まれながら、わたしは拓馬の前に立った。
「ああ、ごめん。気づかなくて。お前足遅いもんな。運動神経もないし」
「歩く速度に運動神経は関係ないと思う……」
運動神経のことを話題に出されると辛い。
「ねえ、あの人格好良くない?」
「モデルかな」
ええ、道行く女性の目を釘付けにするこの美しい顔面にバスケットボールを投げつけたのはわたしです。
思い出すと胃がしくしくしてきて、わたしはワンピースの上からお腹を摩った。
「そうかなあ?」
わざとらしく語尾を伸ばし、笑ってわたしを見つめる拓馬。
橙色の光に照らされたその顔を見る限り、どうやらからかわれているらしい。
「……大体、足が遅いって。そもそもコンパスの長さが違うんだからしょうがないでしょ」
わたしが156、拓馬が170だから、15センチ近く身長差があるんだぞ!
「そうか。つまりおれが高身長なイケメンだから仕方ねえってことだな」
顎に手を当てて呟く拓馬。
「イケメンはいま無関係じゃ……?」
激しく突っ込みたいけれど、本当に文句のつけようのないイケメンだから困る。
通りすがりの中年女性グループまでが「まあイケメン」とか言ってるしな。
しかも頬を染めて。うっとりしながら。
拓馬に「夏祭り、一緒に行かねえ?」と誘われたわたしは、タータンチェックのワンピースを着て、祭囃子が流れる川沿いの道を歩いていた。
道の両脇にはたくさんの屋台が出ていて、結構な人ごみだ。
浴衣姿の女性や甚平姿の男性、カップルにお一人様、家族連れ。
中には犬を抱いて歩いている人もいるし、クレープやたこ焼きを食べながら歩いている人もいる。
「ちょっと待って、拓馬」
人波に流され、先を行く拓馬とはぐれてしまいそうになり、わたしは焦った。
拓馬がわたしの声に気づいて振り返り、クレープの屋台の傍で止まる。
「早かった?」
「早かった。もうちょっとゆっくりでお願いします」
食欲をそそるクレープの甘い匂いに包まれながら、わたしは拓馬の前に立った。
「ああ、ごめん。気づかなくて。お前足遅いもんな。運動神経もないし」
「歩く速度に運動神経は関係ないと思う……」
運動神経のことを話題に出されると辛い。
「ねえ、あの人格好良くない?」
「モデルかな」
ええ、道行く女性の目を釘付けにするこの美しい顔面にバスケットボールを投げつけたのはわたしです。
思い出すと胃がしくしくしてきて、わたしはワンピースの上からお腹を摩った。
「そうかなあ?」
わざとらしく語尾を伸ばし、笑ってわたしを見つめる拓馬。
橙色の光に照らされたその顔を見る限り、どうやらからかわれているらしい。
「……大体、足が遅いって。そもそもコンパスの長さが違うんだからしょうがないでしょ」
わたしが156、拓馬が170だから、15センチ近く身長差があるんだぞ!
「そうか。つまりおれが高身長なイケメンだから仕方ねえってことだな」
顎に手を当てて呟く拓馬。
「イケメンはいま無関係じゃ……?」
激しく突っ込みたいけれど、本当に文句のつけようのないイケメンだから困る。
通りすがりの中年女性グループまでが「まあイケメン」とか言ってるしな。
しかも頬を染めて。うっとりしながら。
