わたしの平和な学園生活は、たった二週間で終わりを告げた。
「野々原って、何かおれに恨みでもあるの」
五時間目の体育が終わった直後、短い休憩時間中。
右の頬をガーゼで覆った拓馬はジャージ姿で保健室のベッドに座っていた。しかめっ面で。
「いいえ、そんなまさか。全くありません」
わたしはベッドの脇の椅子に座り、ひたすら身を小さくしていた。
事の起こりは少し前。
天候が雨だったため、今日の体育は男女ともに体育館でバスケットボールになった。
最初は男女別だったけれど、後半は男女混合になり、試合も行われた。
入学して始めてとなる男女混合のバスケットボールに、ほとんどの生徒は浮かれていた。
気になるあの子に良いところを見せようと張り切る男子、彼氏に声援を送る女子。
試合は常にはない盛り上がりを見せていた。
わたしもチームの皆に迷惑をかけるわけにはいかないと、身を引き締めて臨んだ。
男子から緩いパスを受け取ったときも、張り切ってゴール下にいた味方にパスを繋ごうとした……のだけれど。
ここで問題がひとつ。
わたしは酷い運動音痴だった。
味方に向かって全力投球されたはずのボールは全く見当違いの方向へ飛び、コート外で応援していた生徒へ襲い掛かった。
近くの生徒はとっさに避けてくれた。
しかし、ボールの軌道上にいた拓馬は間の悪いことに、体育館の時計を見ていた。
授業終了間際だったので、あと何分か確かめようとしたのだろう。
結果、ボールは半分顔を背けていた拓馬の頰を直撃。
拓馬は卒倒――打ち所が悪かったらしい。
大騒ぎの末、拓馬はクラスメイトの緑地くんにお姫様抱っこされて保健室へと運ばれていった。
授業が終わるや否や、わたしは速攻で着替えを済ませてお見舞いに駆けつけ……いまに至るというわけ。
拓馬がすぐ意識を回復し、軽い脳震盪で済んだことは本当に良かったけれど、端正な顔立ちを覆う白いガーゼは目に眩しい。
それに、この後彼が教室でどんな憂き目に遭うか想像するだけで胃がきりきりする。
拓馬がクラスメイトの緑地《りょくち》くんにお姫様抱っこされた際、クラスメイトのお調子者たちは「姫だ」「黒瀬が姫だ」と騒いでいた。
彼が教室に戻れば「姫が帰って来たぞ」とか言われるのだろう。
しばらくはからかわれるに違いない。わたしのせいで。
「野々原って、何かおれに恨みでもあるの」
五時間目の体育が終わった直後、短い休憩時間中。
右の頬をガーゼで覆った拓馬はジャージ姿で保健室のベッドに座っていた。しかめっ面で。
「いいえ、そんなまさか。全くありません」
わたしはベッドの脇の椅子に座り、ひたすら身を小さくしていた。
事の起こりは少し前。
天候が雨だったため、今日の体育は男女ともに体育館でバスケットボールになった。
最初は男女別だったけれど、後半は男女混合になり、試合も行われた。
入学して始めてとなる男女混合のバスケットボールに、ほとんどの生徒は浮かれていた。
気になるあの子に良いところを見せようと張り切る男子、彼氏に声援を送る女子。
試合は常にはない盛り上がりを見せていた。
わたしもチームの皆に迷惑をかけるわけにはいかないと、身を引き締めて臨んだ。
男子から緩いパスを受け取ったときも、張り切ってゴール下にいた味方にパスを繋ごうとした……のだけれど。
ここで問題がひとつ。
わたしは酷い運動音痴だった。
味方に向かって全力投球されたはずのボールは全く見当違いの方向へ飛び、コート外で応援していた生徒へ襲い掛かった。
近くの生徒はとっさに避けてくれた。
しかし、ボールの軌道上にいた拓馬は間の悪いことに、体育館の時計を見ていた。
授業終了間際だったので、あと何分か確かめようとしたのだろう。
結果、ボールは半分顔を背けていた拓馬の頰を直撃。
拓馬は卒倒――打ち所が悪かったらしい。
大騒ぎの末、拓馬はクラスメイトの緑地くんにお姫様抱っこされて保健室へと運ばれていった。
授業が終わるや否や、わたしは速攻で着替えを済ませてお見舞いに駆けつけ……いまに至るというわけ。
拓馬がすぐ意識を回復し、軽い脳震盪で済んだことは本当に良かったけれど、端正な顔立ちを覆う白いガーゼは目に眩しい。
それに、この後彼が教室でどんな憂き目に遭うか想像するだけで胃がきりきりする。
拓馬がクラスメイトの緑地《りょくち》くんにお姫様抱っこされた際、クラスメイトのお調子者たちは「姫だ」「黒瀬が姫だ」と騒いでいた。
彼が教室に戻れば「姫が帰って来たぞ」とか言われるのだろう。
しばらくはからかわれるに違いない。わたしのせいで。

