「か、か、彼女だとっ!? どういうことだ、貴様! ボクの女神を誑かしたのか!」
井田先輩は口角から唾を飛ばして拓馬の胸倉を掴み上げた。
由香ちゃんが小さな悲鳴をあげ、わたしも息を呑む。
拓馬は動じず、手の動作で由香ちゃんに下がるよう指示した。
「誑かすなんて人聞きの悪い。想いが通じ合った結果、自然と付き合うようになっただけですよ。由香は女神でも何でもない。ごく普通の人間です。勝手なイメージを押しつけられる由香の身にも――」
がつんっ、という鈍い音。
井田先輩が問答無用とばかりに拓馬の右頬を殴りつけたのだ。
拓馬はその場から一歩も動かず、衝撃のまま左を向き、再び前を向いた。
右の下唇に赤いものが滲んでいる。
話す途中で殴られたから唇を切ったのだろう。
――なんてことを!
わたしは口を手で覆った。
「彼氏ヅラして偉そうに説教するなっ!」
「いや、だから彼氏なんですって」
殴られたことなどなかったように、拓馬がきっぱり言い返す。
その落ち着いた態度が癇に障ったらしく、井田先輩は激高した。
「うるさああいっ! ちょっと顔がいいからって調子に乗るなっ! ボクから彼女を奪うなんて許さないぞ! 純粋無垢で清らかな女神を惑わせる悪魔め、ボクがこの手で粛清してくれる――!」
目を血走らせ、井田先輩は拓馬の首を両手で鷲掴みにした。
さすがにこれには拓馬も抵抗を示し、井田先輩の腕を掴んで引きはがそうとする。
「止めて!!」
由香ちゃんが必死の形相で井田先輩の腕にしがみつき、わたしも幸太くんも堪らず屋上へ飛び出した。
「邪魔するな!!」
「あっ」
井田先輩は由香ちゃんの手を乱暴に振りほどき、尻餅をつかせた。
再び井田先輩が拓馬にその魔手を伸ばそうとした刹那。
給水塔の方角から目に止まらぬ速さで人影が走ってきて、井田先輩を蹴り飛ばした。
――えっ?
井田先輩は吹っ飛び、もんどりうって倒れた。
唖然として見れば、井田先輩がいた場所に陸先輩が立っている。
井田先輩は口角から唾を飛ばして拓馬の胸倉を掴み上げた。
由香ちゃんが小さな悲鳴をあげ、わたしも息を呑む。
拓馬は動じず、手の動作で由香ちゃんに下がるよう指示した。
「誑かすなんて人聞きの悪い。想いが通じ合った結果、自然と付き合うようになっただけですよ。由香は女神でも何でもない。ごく普通の人間です。勝手なイメージを押しつけられる由香の身にも――」
がつんっ、という鈍い音。
井田先輩が問答無用とばかりに拓馬の右頬を殴りつけたのだ。
拓馬はその場から一歩も動かず、衝撃のまま左を向き、再び前を向いた。
右の下唇に赤いものが滲んでいる。
話す途中で殴られたから唇を切ったのだろう。
――なんてことを!
わたしは口を手で覆った。
「彼氏ヅラして偉そうに説教するなっ!」
「いや、だから彼氏なんですって」
殴られたことなどなかったように、拓馬がきっぱり言い返す。
その落ち着いた態度が癇に障ったらしく、井田先輩は激高した。
「うるさああいっ! ちょっと顔がいいからって調子に乗るなっ! ボクから彼女を奪うなんて許さないぞ! 純粋無垢で清らかな女神を惑わせる悪魔め、ボクがこの手で粛清してくれる――!」
目を血走らせ、井田先輩は拓馬の首を両手で鷲掴みにした。
さすがにこれには拓馬も抵抗を示し、井田先輩の腕を掴んで引きはがそうとする。
「止めて!!」
由香ちゃんが必死の形相で井田先輩の腕にしがみつき、わたしも幸太くんも堪らず屋上へ飛び出した。
「邪魔するな!!」
「あっ」
井田先輩は由香ちゃんの手を乱暴に振りほどき、尻餅をつかせた。
再び井田先輩が拓馬にその魔手を伸ばそうとした刹那。
給水塔の方角から目に止まらぬ速さで人影が走ってきて、井田先輩を蹴り飛ばした。
――えっ?
井田先輩は吹っ飛び、もんどりうって倒れた。
唖然として見れば、井田先輩がいた場所に陸先輩が立っている。

