「……ずるい。乃亜の左手の小指には赤い糸が五本も結われているのに」
唇を尖らせたけれど、ハムスターはわたしの抗議を無視して賽銭箱から飛び降りた。
小さなハムスターにとっては地面までかなりの距離がある。
怪我をしたんじゃないかと慌てたけれど、ハムスターは平気な顔で四本の足を動かし、わたしの足元に寄って来た。
その途中で急に足を止め、ハムスターは曇天を見上げた。
何を見ているのだろう、と訝って、気づいた。
一粒の滴が視界の端にある地面の水たまりを揺らした。
雨が降り出したのだ。
「……ねえ。あなた、名前はあるの」
わたしは鞄をかけ直し、ハムスターに歩み寄って屈んだ。
「特にない。好きに呼ぶといい」
「じゃあ今日から大福ね」
わたしはハムスターを両手ですくい上げるようにして持ち上げた。
「大福……」
お気に召さなかったらしく、ハムスターはわたしの手の上で、不満げに唸った。
「好きに呼べって言ったのはあなたでしょ? 家はあるの?」
「ないけど」
「じゃあうちに来る? 回し車とか買ってあげるよ」
「……なんで?」
大福はわたしを見上げている。心なしか、怪訝そうにも見えた。
「だって、濡れ鼠になったハムスターなんて見たくないし」
たとえ本物のハムスターではないとしても、大福の姿はまるっきりハムスターにしか見えない。
元ハムスター飼いとして、家のないハムスターを放っておくことなどできるわけがなかった。
唇を尖らせたけれど、ハムスターはわたしの抗議を無視して賽銭箱から飛び降りた。
小さなハムスターにとっては地面までかなりの距離がある。
怪我をしたんじゃないかと慌てたけれど、ハムスターは平気な顔で四本の足を動かし、わたしの足元に寄って来た。
その途中で急に足を止め、ハムスターは曇天を見上げた。
何を見ているのだろう、と訝って、気づいた。
一粒の滴が視界の端にある地面の水たまりを揺らした。
雨が降り出したのだ。
「……ねえ。あなた、名前はあるの」
わたしは鞄をかけ直し、ハムスターに歩み寄って屈んだ。
「特にない。好きに呼ぶといい」
「じゃあ今日から大福ね」
わたしはハムスターを両手ですくい上げるようにして持ち上げた。
「大福……」
お気に召さなかったらしく、ハムスターはわたしの手の上で、不満げに唸った。
「好きに呼べって言ったのはあなたでしょ? 家はあるの?」
「ないけど」
「じゃあうちに来る? 回し車とか買ってあげるよ」
「……なんで?」
大福はわたしを見上げている。心なしか、怪訝そうにも見えた。
「だって、濡れ鼠になったハムスターなんて見たくないし」
たとえ本物のハムスターではないとしても、大福の姿はまるっきりハムスターにしか見えない。
元ハムスター飼いとして、家のないハムスターを放っておくことなどできるわけがなかった。
