乙女ゲームの世界に転生しちゃったんですけど~ヒロインは恋のライバルです!?~

「野々原悠理。お前はそもそもこの世界の住人じゃないだろう」
「!?」
 そのものずばりを言い当てられ、わたしはぎょっとした。
「何かの事故か、他の神の手違いでお前はこの世界に生まれてしまった。神はお前を警戒し、オイラに監視役を命じていたんだけど、恐れていたことが起きた。お前は黒瀬拓馬の顔面にボールをぶつけ、その衝撃で拓馬の感情制限を外しちまったんだ」
「感情制限って何? どういうこと?」
 わたしはハムスターに詰め寄った。
「黒瀬拓馬には一色乃亜という運命の相手がいる。拓馬には乃亜に出会うまで他の人間に心を奪われたりしないよう感情制限がかかってたんだ。わかりやすく言うと、どんな女子に対しても塩対応を貫くようになってたわけだな」
「ああーっ! じゃあボールをぶつける前まで拓馬が冷たかったのは神さまのせいなの!?」
 ボールをぶつける前と後じゃ、拓馬の態度が全然違った。
 わたし、完全に空気扱いされてたもん!
「責められても困る。運命の相手であるヒロインとその他のモブじゃ扱いに明確な差があって当然だろ」
「でもそれって酷くない!? いくら神さまだろうと、感情を制限するなんて、拓馬の意思を完全に無視してる! 人権侵害だわ!」
「酷いと言われても。拓馬は乃亜と出会って恋に落ちる、それが神によって定められた運命なんだ。オイラは神の使いとして運命を守り、見届ける義務がある。障害は排除しなければならない」
 つぶらな黒い瞳で見据えられて、わたしは後ずさった。
「排除って……わたしを殺すの? わたし、神社でハムスターに殺された悲劇の美少女Yとして明日の朝の新聞の見出しを飾ることになるの?」
「美少女ってお前……そんな冗談が言えるとは、随分と余裕があるじゃないか」
「死ぬときくらいは多少盛っても許されると思うの」
「多少どころかメガ盛りだぞ」
 呆れたように言って、ハムスターは前足で頭を掻いた。
「ともあれ、心配することはないよ。排除ったって、殺人なんて野蛮なことはしない。記憶を消したり弄ったりするだけだ」
「十分怖いよ」
「それに何より」
 ハムスターはわたしの言葉を黙殺した。