乙女ゲームの世界に転生しちゃったんですけど~ヒロインは恋のライバルです!?~

「お子様だよな、幸太は。これくらいの甘さがちょうどいいのに」
 拓馬がクッキーを一枚摘まむ。
「あー、そっか。拓馬は甘すぎるの苦手だもんな。知っててアイスボックスクッキーにしたの?」
「え?」
 そうなの? と、拓馬が目で問いかけてくる。
「ええと、それはその」
 知っていた。でもそれはゲーム内で得た知識だなんて言えず、わたしは頭をフル回転させて言い訳を探した。
「昼休憩のとき、たまに購買のパンと一緒にコーヒー飲んでるじゃない? でも、ブラックや微糖のときはあるけど、ココアやカフェオレは飲んでるとこ見たことなかったから、甘いのは苦手なのかなって。手料理が苦手になったきっかけはバレンタインデーにもらったチョコに髪の毛が入ってたことだって言ってたし、甘い物全般ダメなのかなって」
 緑地くんは目を見張り、白石先輩は「ふうん」と微笑み、赤嶺先輩はやっぱり無表情。
 拓馬はなんとも形容しがたい顔をしている。
「……? どうかしました?」
 皆が何を思っているのかわからず、わたしは戸惑った。
「いやー、感心したわ。拓馬のことよく見てるんだなー、なるほどねー。拓馬にも春が来たかー。思えばクラス対抗リレーでも野々原ちゃんが落とした順位を拓馬が全力で戻してたもんなー。あれはそういうわけかー」
 腕組みして、緑地くんが何度も頷いている。
「……野々原ちゃんって」
「あ、ダメ?」
 子犬みたいに可愛らしく首を傾げられ、わたしはたちまちその魅力に屈した。
「ううん、どうぞ」
「やった、じゃーこれから野々原ちゃんね。本当は親しみを込めて悠理ちゃんって呼びたいけど、それだと拓馬に怒られそうだし?」
 緑地くんが口に手を当て、ニヤニヤしながら拓馬を見る。
「なんで呼び方一つでおれが怒るんだよ。呼びたきゃ好きに呼べば? こいつがいいって言うならな」
 拓馬はガラスコップを持ち上げ、中の氷がぶつかる涼しげな音を立てながら、ストローを咥えた。
「こいつだって。もう完全にカレカノ――」
「幸太」
 白石先輩がにこやかに笑い、ずびしっ! と緑地くんの脇腹に手刀を入れた。
 緑地くんが息を詰まらせ、打たれた箇所を押さえて身体を丸める。
 け、結構良い音がしたぞ?