乙女ゲームの世界に転生しちゃったんですけど~ヒロインは恋のライバルです!?~

 二人三脚が終わり、わたしが出場する借り物競争が始まった。
 号砲が鳴り、生徒たちが一斉に飛び出し、二十メートルほど先に散らばるお題が書かれた白い紙に飛びつく。
 借りやすい物――あるいは者――のお題を引いた生徒は喜び、反対に借りにくい物を引いてしまった生徒は渋面になりながら、グラウンドや校舎の方向に散って目的のものを探す。
 いよいよ出番となり、わたしはスタートラインに立った。
 同じスタートラインに立つ生徒は七人。
 わたしの隣の男子生徒は軽く屈伸している。
 いかにもやる気満々って感じだ。
 引き締まった身体つきだし、わたしより遥かに足が速そう。
 でも、借り物競争は運動能力というより運の勝負。
 借りやすい物が引けますようにと、わたしはコースの先にある紙を見つめて祈った。
 前回の出場選手のほとんどがゴールしたところで、スターターピストルが掲げられた。
「位置について。用意……」
 号砲が炸裂する。
 その音量に身を震わせつつ、わたしは他の出場選手と同時に走り出した。
「走れー!」
 一組の応援席のほうから、生徒たちの声援に混じって拓馬の声がした。
 その声がわたしに活力をくれた。
 他の出場選手に追いつけなくても気にしない。
 易々と追い抜かれてもめげない、挫けない。
 とにかく腕を振り、グラウンドを蹴って、全力で走る!
 紙が散らばるゾーンに最も遅く着き、その中の一枚を拾い上げる。
 お題は伏せられているし、見た目は全部同じなのでどれがいいのかなんて考えても仕方ない。
 勘に任せて拾った紙を裏返しにし、お題を確認。
 お題は至極単純で、小学生でも理解できる簡単なカタカナ四文字だった。
『イケメン』
 誰だ、このお題を考えた人は……。
 膝をつきそうになるのを堪えて、わたしはグラウンドを見回した。