翌朝、エリアナは自室の机に向かった。
証拠を確認するために。
父の毒殺に関する証拠。
マリアの証言録。医師の買収記録。黒いローブの男の情報。
全てを、机の引き出しに保管していた。
エリアナは、引き出しを開けた。
中を見る。
空だった。
エリアナの心臓が、止まった。
「ない……」
エリアナは、慌てて引き出しを探った。
だが、何もない。
文書も、証言録も、記録も。
全てが、消えている。
「誰が……」
エリアナは、部屋中を探し始めた。
机の下、本棚の裏、ベッドの下。
どこを探しても、見つからない。
エリアナは、メイドたちを呼んだ。
「誰か、私の部屋に入りましたか」
メイド長のマルタが、首を横に振った。
「いいえ、皇妃陛下。昨夜は誰も」
エリアナは、歯を食いしばった。
継母。
継母の仕業に違いない。
だが、証明できない。
証拠がない。
そして、これまで集めた証拠も、消えた。
エリアナは、部屋に一人残された。
膝から、力が抜ける。
椅子に座り込む。
「どうして……」
あんなに苦労して集めた証拠。
全てが、消えた。
扉が開いた。
カイザーが、入ってくる。
「エリアナ、何があった」
カイザーの声が、心配そうだった。
エリアナが、顔を上げる。
「証拠が、消えました」
カイザーが、エリアナに近づいた。
「証拠?」
「父の毒殺の証拠です。全て、消えました」
エリアナの声が、震える。
カイザーは、エリアナを抱きしめた。
「大丈夫だ」
カイザーの声が、優しい。
「俺が、何とかする」
エリアナは、カイザーの胸に顔を埋めた。
「でも……証拠がなければ……」
「証拠は、また集められる」
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
「焦るな。お前は一人じゃない」
エリアナは、頷いた。
だが、胸の奥には焦燥があった。
継母は、こんなに用意周到だったのか。
エリアナの動きを、全て見ていたのか。
恐怖が、エリアナの心を蝕み始めた。
数日後、カイザーはエリアナに告げた。
「侍女を、尋問する」
毒殺未遂の侍女。
牢に入れられている。
今日、尋問する予定だった。
エリアナとカイザーは、牢へ向かった。
地下の暗い通路。
松明の光が、壁を照らす。
看守が、二人を案内する。
「こちらです、陛下」
看守が、牢の前で止まった。
鉄格子の向こう。
暗い牢。
だが、中に人の気配がない。
カイザーが、眉をひそめた。
「侍女は、どこだ」
看守が、牢の扉を開けた。
中に入る。
そして、叫んだ。
「陛下!」
カイザーとエリアナが、牢の中へ入った。
床に、侍女が倒れていた。
動かない。
エリアナが、駆け寄った。
侍女の首に手を当てる。
脈がない。
「死んでいます」
エリアナの声が、低く響く。
カイザーが、看守を睨んだ。
「どういうことだ」
看守が、震えている。
「わかりません、陛下。今朝、見回りをした時は生きていました」
カイザーが、侍女の体を見た。
口元に、泡の跡。
「毒だ」
カイザーの声が、冷たい。
「誰かが、毒を飲ませた」
看守が、顔色を失った。
「そんな……」
カイザーが、看守を掴んだ。
「お前が、やったのか」
「違います! 私は何も!」
看守が、必死に否定する。
エリアナは、侍女の体を見つめた。
口封じ。
継母が、買収した看守を使って、侍女を殺した。
証拠隠滅。
完璧に。
エリアナの拳が、握りしめられた。
継母は、こんなに用意周到だったのか。
全ての手を、先回りして潰している。
カイザーが、看守を突き放した。
「この件を、徹底的に調査しろ」
カイザーの声が、命令口調。
「はい、陛下」
看守が、慌てて頭を下げた。
エリアナとカイザーは、牢を後にした。
通路を歩きながら、カイザーが言った。
「焦るな、エリアナ」
「はい」
エリアナは、答えた。
だが、内心では焦燥が渦巻いていた。
継母は、強い。
用意周到で、冷酷で、完璧に証拠を隠す。
エリアナは、勝てるのか。
カイザーが、エリアナの手を握った。
「必ず、ボロを出す」
カイザーの声が、確信に満ちている。
「どんなに完璧に見えても、必ず隙がある」
エリアナは、頷いた。
信じるしかない。
カイザーを。
そして、自分を。
数日後、議会が招集された。
エリアナとカイザーも、出席を求められた。
議会の大広間。
高い天井。円形に配置された席。
議員たちが、既に集まっている。
エリアナとカイザーが入ると、視線が集まった。
二人は、上座に座った。
議長が、立ち上がった。
「本日の議会を、開始する」
議長の声が、広間に響く。
「まず、重大な告発がある」
エリアナの心臓が、跳ね上がった。
告発?
議長が、一通の手紙を手に取った。
「匿名の告発文が、議会に提出された」
議長が、手紙を読み上げる。
「皇妃エリアナは、先帝陛下暗殺未遂の黒幕である」
広間が、静まり返った。
エリアナの体が、固まった。
「証拠として、以下の文書が添付されている」
議長が、別の書類を取り出す。
「先帝陛下が倒れる前日、エリアナが怪しげな男と接触していた記録」
「エリアナが毒薬を購入した記録」
「エリアナが先帝陛下を恨んでいたという証言」
全て、嘘だ。
偽造された証拠。
だが、議員たちは騒然となった。
「皇妃が、反逆者だと?」
「信じられない」
「しかし、証拠があるなら」
カイザーが、立ち上がった。
「デタラメだ!」
カイザーの声が、雷のように響いた。
「これは、全て偽造された証拠だ!」
議長が、カイザーを見た。
「陛下、お気持ちはわかります。しかし、証拠がある以上、調査は必要です」
議員たちが、頷く。
「そうだ。調査すべきだ」
「真実を明らかにしなければ」
カイザーが、議員たちを睨んだ。
「エリアナは、何もしていない」
カイザーの声が、強い。
「俺が、保証する」
だが、議長は首を横に振った。
「陛下の保証では、不十分です」
議長が、エリアナを見た。
「皇妃陛下、この告発に対して、弁明していただけますか」
エリアナは、立ち上がった。
心臓が、早鐘を打っている。
だが、表情は冷静に保つ。
「この告発は、全て虚偽です」
エリアナの声が、広間に響く。
「私は、先帝陛下を恨んだことも、暗殺を企てたこともありません」
議員の一人が、立ち上がった。
「では、この証拠は何ですか」
議員が、書類を掲げる。
「ここには、貴女が毒薬を購入したとあります」
エリアナは、首を横に振った。
「それは、偽造です」
「証明できますか」
議員が、問う。
エリアナは、言葉に詰まった。
証明。
どうやって?
証拠が、ない。
エリアナが集めた証拠は、全て消えた。
そして、偽造された証拠ばかりが残っている。
「証明できないのですか」
別の議員が、立ち上がった。
「ならば、調査が必要だ」
議員たちが、次々と同意する。
「そうだ。徹底的に調査すべきだ」
「真実を明らかにしなければ」
カイザーが、拳を握りしめた。
「待て。これは、罠だ」
カイザーの声が、響く。
「誰かが、エリアナを陥れようとしている」
だが、議長は首を横に振った。
「それも含めて、調査します」
議長が、宣言する。
「調査中、皇妃陛下には謹慎していただきます」
エリアナの目が、見開かれた。
「謹慎……?」
「はい。疑いが晴れるまで、公の場への出席を控えていただきます」
議員たちが、頷く。
カイザーが、議長に詰め寄った。
「ふざけるな!」
だが、議長は動じない。
「これは、議会の決定です」
カイザーが、エリアナを見た。
その目には、怒りと無念。
エリアナは、小さく頷いた。
「わかりました。謹慎します」
エリアナの声が、静かに響く。
議会が、閉会した。
エリアナとカイザーは、王宮へ戻った。
馬車の中で、カイザーは黙っていた。
拳を、強く握りしめている。
エリアナは、窓の外を見ていた。
王都の街並み。
だが、その光景が霞んで見える。
窮地。
エリアナは、完全に追い詰められた。
証拠は消え、濡れ衣を着せられ、謹慎を命じられた。
継母の勝ちか。
エリアナは、唇を噛んだ。
まだ、諦めない。
まだ、戦える。
カイザーが、エリアナの手を握った。
「大丈夫だ。必ず、真実を明らかにする」
エリアナは、カイザーを見た。
「ありがとうございます」
だが、内心では不安が渦巻いていた。
その夜、継母の屋敷。
豪華な応接間で、継母マルグリットとイザベラが座っていた。
継母は、紅茶を啜りながら微笑んでいる。
イザベラは、勝ち誇った表情。
「お母様、やりましたわ」
イザベラの声が、嬉しそうだった。
「姉が、謹慎ですって」
継母が、冷笑した。
「当然よ。あの娘を、完全に潰すつもりだもの」
継母が、紅茶を置く。
「証拠は全て消した。侍女も口封じした」
継母の目が、冷たく光る。
「そして、偽造した証拠を議会に提出した」
イザベラが、笑った。
「完璧ですわ、お母様」
「ええ」
継母が、立ち上がる。
「次は、あの娘を地獄に突き落とす」
イザベラが、目を輝かせた。
「どうやって?」
「まだ、秘密よ」
継母が、窓の外を見る。
「だが、もうすぐわかるわ」
継母の笑い声が、部屋に響いた。
冷たく、残酷な笑い声。
イザベラも、笑った。
「姉を、地獄に」
二人の笑い声が、屋敷に響く。
エリアナの運命は、闇の中へ沈もうとしていた。
その頃、王宮。
エリアナは、自室のベッドに座っていた。
窓の外を見つめている。
夜空に、星が輝いている。
だが、エリアナの心は暗かった。
窮地。
完全な窮地。
証拠もなく、濡れ衣を着せられ、謹慎を命じられた。
継母は、完璧に計画を実行した。
エリアナは、負けるのか。
扉が、ノックされた。
「入ってください」
エリアナの声が、静かに響く。
カイザーが、入ってきた。
エリアナの隣に座る。
「大丈夫か」
カイザーの声が、心配そうだった。
エリアナは、首を横に振った。
「わかりません」
エリアナの声が、震える。
「継母は、こんなに強かったのです」
カイザーが、エリアナを抱きしめた。
「お前は、もっと強い」
カイザーの声が、優しい。
「必ず、勝てる」
エリアナは、カイザーの胸に顔を埋めた。
「信じたいです」
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
「俺を信じろ。そして、お前自身を信じろ」
エリアナは、頷いた。
だが、胸の奥には不安が残っていた。
本当に、勝てるのか。
夜が、深くなっていく。
エリアナとカイザーは、抱き合ったまま、静かな時を過ごした。
明日、何が起こるのか。
誰にも、わからない。
だが、エリアナは戦い続ける。
諦めない。
必ず、真実を明らかにする。
そう、誓った。
証拠を確認するために。
父の毒殺に関する証拠。
マリアの証言録。医師の買収記録。黒いローブの男の情報。
全てを、机の引き出しに保管していた。
エリアナは、引き出しを開けた。
中を見る。
空だった。
エリアナの心臓が、止まった。
「ない……」
エリアナは、慌てて引き出しを探った。
だが、何もない。
文書も、証言録も、記録も。
全てが、消えている。
「誰が……」
エリアナは、部屋中を探し始めた。
机の下、本棚の裏、ベッドの下。
どこを探しても、見つからない。
エリアナは、メイドたちを呼んだ。
「誰か、私の部屋に入りましたか」
メイド長のマルタが、首を横に振った。
「いいえ、皇妃陛下。昨夜は誰も」
エリアナは、歯を食いしばった。
継母。
継母の仕業に違いない。
だが、証明できない。
証拠がない。
そして、これまで集めた証拠も、消えた。
エリアナは、部屋に一人残された。
膝から、力が抜ける。
椅子に座り込む。
「どうして……」
あんなに苦労して集めた証拠。
全てが、消えた。
扉が開いた。
カイザーが、入ってくる。
「エリアナ、何があった」
カイザーの声が、心配そうだった。
エリアナが、顔を上げる。
「証拠が、消えました」
カイザーが、エリアナに近づいた。
「証拠?」
「父の毒殺の証拠です。全て、消えました」
エリアナの声が、震える。
カイザーは、エリアナを抱きしめた。
「大丈夫だ」
カイザーの声が、優しい。
「俺が、何とかする」
エリアナは、カイザーの胸に顔を埋めた。
「でも……証拠がなければ……」
「証拠は、また集められる」
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
「焦るな。お前は一人じゃない」
エリアナは、頷いた。
だが、胸の奥には焦燥があった。
継母は、こんなに用意周到だったのか。
エリアナの動きを、全て見ていたのか。
恐怖が、エリアナの心を蝕み始めた。
数日後、カイザーはエリアナに告げた。
「侍女を、尋問する」
毒殺未遂の侍女。
牢に入れられている。
今日、尋問する予定だった。
エリアナとカイザーは、牢へ向かった。
地下の暗い通路。
松明の光が、壁を照らす。
看守が、二人を案内する。
「こちらです、陛下」
看守が、牢の前で止まった。
鉄格子の向こう。
暗い牢。
だが、中に人の気配がない。
カイザーが、眉をひそめた。
「侍女は、どこだ」
看守が、牢の扉を開けた。
中に入る。
そして、叫んだ。
「陛下!」
カイザーとエリアナが、牢の中へ入った。
床に、侍女が倒れていた。
動かない。
エリアナが、駆け寄った。
侍女の首に手を当てる。
脈がない。
「死んでいます」
エリアナの声が、低く響く。
カイザーが、看守を睨んだ。
「どういうことだ」
看守が、震えている。
「わかりません、陛下。今朝、見回りをした時は生きていました」
カイザーが、侍女の体を見た。
口元に、泡の跡。
「毒だ」
カイザーの声が、冷たい。
「誰かが、毒を飲ませた」
看守が、顔色を失った。
「そんな……」
カイザーが、看守を掴んだ。
「お前が、やったのか」
「違います! 私は何も!」
看守が、必死に否定する。
エリアナは、侍女の体を見つめた。
口封じ。
継母が、買収した看守を使って、侍女を殺した。
証拠隠滅。
完璧に。
エリアナの拳が、握りしめられた。
継母は、こんなに用意周到だったのか。
全ての手を、先回りして潰している。
カイザーが、看守を突き放した。
「この件を、徹底的に調査しろ」
カイザーの声が、命令口調。
「はい、陛下」
看守が、慌てて頭を下げた。
エリアナとカイザーは、牢を後にした。
通路を歩きながら、カイザーが言った。
「焦るな、エリアナ」
「はい」
エリアナは、答えた。
だが、内心では焦燥が渦巻いていた。
継母は、強い。
用意周到で、冷酷で、完璧に証拠を隠す。
エリアナは、勝てるのか。
カイザーが、エリアナの手を握った。
「必ず、ボロを出す」
カイザーの声が、確信に満ちている。
「どんなに完璧に見えても、必ず隙がある」
エリアナは、頷いた。
信じるしかない。
カイザーを。
そして、自分を。
数日後、議会が招集された。
エリアナとカイザーも、出席を求められた。
議会の大広間。
高い天井。円形に配置された席。
議員たちが、既に集まっている。
エリアナとカイザーが入ると、視線が集まった。
二人は、上座に座った。
議長が、立ち上がった。
「本日の議会を、開始する」
議長の声が、広間に響く。
「まず、重大な告発がある」
エリアナの心臓が、跳ね上がった。
告発?
議長が、一通の手紙を手に取った。
「匿名の告発文が、議会に提出された」
議長が、手紙を読み上げる。
「皇妃エリアナは、先帝陛下暗殺未遂の黒幕である」
広間が、静まり返った。
エリアナの体が、固まった。
「証拠として、以下の文書が添付されている」
議長が、別の書類を取り出す。
「先帝陛下が倒れる前日、エリアナが怪しげな男と接触していた記録」
「エリアナが毒薬を購入した記録」
「エリアナが先帝陛下を恨んでいたという証言」
全て、嘘だ。
偽造された証拠。
だが、議員たちは騒然となった。
「皇妃が、反逆者だと?」
「信じられない」
「しかし、証拠があるなら」
カイザーが、立ち上がった。
「デタラメだ!」
カイザーの声が、雷のように響いた。
「これは、全て偽造された証拠だ!」
議長が、カイザーを見た。
「陛下、お気持ちはわかります。しかし、証拠がある以上、調査は必要です」
議員たちが、頷く。
「そうだ。調査すべきだ」
「真実を明らかにしなければ」
カイザーが、議員たちを睨んだ。
「エリアナは、何もしていない」
カイザーの声が、強い。
「俺が、保証する」
だが、議長は首を横に振った。
「陛下の保証では、不十分です」
議長が、エリアナを見た。
「皇妃陛下、この告発に対して、弁明していただけますか」
エリアナは、立ち上がった。
心臓が、早鐘を打っている。
だが、表情は冷静に保つ。
「この告発は、全て虚偽です」
エリアナの声が、広間に響く。
「私は、先帝陛下を恨んだことも、暗殺を企てたこともありません」
議員の一人が、立ち上がった。
「では、この証拠は何ですか」
議員が、書類を掲げる。
「ここには、貴女が毒薬を購入したとあります」
エリアナは、首を横に振った。
「それは、偽造です」
「証明できますか」
議員が、問う。
エリアナは、言葉に詰まった。
証明。
どうやって?
証拠が、ない。
エリアナが集めた証拠は、全て消えた。
そして、偽造された証拠ばかりが残っている。
「証明できないのですか」
別の議員が、立ち上がった。
「ならば、調査が必要だ」
議員たちが、次々と同意する。
「そうだ。徹底的に調査すべきだ」
「真実を明らかにしなければ」
カイザーが、拳を握りしめた。
「待て。これは、罠だ」
カイザーの声が、響く。
「誰かが、エリアナを陥れようとしている」
だが、議長は首を横に振った。
「それも含めて、調査します」
議長が、宣言する。
「調査中、皇妃陛下には謹慎していただきます」
エリアナの目が、見開かれた。
「謹慎……?」
「はい。疑いが晴れるまで、公の場への出席を控えていただきます」
議員たちが、頷く。
カイザーが、議長に詰め寄った。
「ふざけるな!」
だが、議長は動じない。
「これは、議会の決定です」
カイザーが、エリアナを見た。
その目には、怒りと無念。
エリアナは、小さく頷いた。
「わかりました。謹慎します」
エリアナの声が、静かに響く。
議会が、閉会した。
エリアナとカイザーは、王宮へ戻った。
馬車の中で、カイザーは黙っていた。
拳を、強く握りしめている。
エリアナは、窓の外を見ていた。
王都の街並み。
だが、その光景が霞んで見える。
窮地。
エリアナは、完全に追い詰められた。
証拠は消え、濡れ衣を着せられ、謹慎を命じられた。
継母の勝ちか。
エリアナは、唇を噛んだ。
まだ、諦めない。
まだ、戦える。
カイザーが、エリアナの手を握った。
「大丈夫だ。必ず、真実を明らかにする」
エリアナは、カイザーを見た。
「ありがとうございます」
だが、内心では不安が渦巻いていた。
その夜、継母の屋敷。
豪華な応接間で、継母マルグリットとイザベラが座っていた。
継母は、紅茶を啜りながら微笑んでいる。
イザベラは、勝ち誇った表情。
「お母様、やりましたわ」
イザベラの声が、嬉しそうだった。
「姉が、謹慎ですって」
継母が、冷笑した。
「当然よ。あの娘を、完全に潰すつもりだもの」
継母が、紅茶を置く。
「証拠は全て消した。侍女も口封じした」
継母の目が、冷たく光る。
「そして、偽造した証拠を議会に提出した」
イザベラが、笑った。
「完璧ですわ、お母様」
「ええ」
継母が、立ち上がる。
「次は、あの娘を地獄に突き落とす」
イザベラが、目を輝かせた。
「どうやって?」
「まだ、秘密よ」
継母が、窓の外を見る。
「だが、もうすぐわかるわ」
継母の笑い声が、部屋に響いた。
冷たく、残酷な笑い声。
イザベラも、笑った。
「姉を、地獄に」
二人の笑い声が、屋敷に響く。
エリアナの運命は、闇の中へ沈もうとしていた。
その頃、王宮。
エリアナは、自室のベッドに座っていた。
窓の外を見つめている。
夜空に、星が輝いている。
だが、エリアナの心は暗かった。
窮地。
完全な窮地。
証拠もなく、濡れ衣を着せられ、謹慎を命じられた。
継母は、完璧に計画を実行した。
エリアナは、負けるのか。
扉が、ノックされた。
「入ってください」
エリアナの声が、静かに響く。
カイザーが、入ってきた。
エリアナの隣に座る。
「大丈夫か」
カイザーの声が、心配そうだった。
エリアナは、首を横に振った。
「わかりません」
エリアナの声が、震える。
「継母は、こんなに強かったのです」
カイザーが、エリアナを抱きしめた。
「お前は、もっと強い」
カイザーの声が、優しい。
「必ず、勝てる」
エリアナは、カイザーの胸に顔を埋めた。
「信じたいです」
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
「俺を信じろ。そして、お前自身を信じろ」
エリアナは、頷いた。
だが、胸の奥には不安が残っていた。
本当に、勝てるのか。
夜が、深くなっていく。
エリアナとカイザーは、抱き合ったまま、静かな時を過ごした。
明日、何が起こるのか。
誰にも、わからない。
だが、エリアナは戦い続ける。
諦めない。
必ず、真実を明らかにする。
そう、誓った。


