数日後、エリアナは王都の皇宮に移住した。
豪華な馬車が、エリアナを辺境から王都へ運ぶ。
カイザーは、既に先に戻っていた。
馬車が王都の門を抜ける。
石畳の道。高い建物。行き交う人々。
そして、宮殿。
白い壁。高い塔。金色の装飾。
エリアナは、窓から宮殿を見上げた。
こんな場所に、自分が住むのか。
信じられない。
馬車が、宮殿の門を抜ける。
広い中庭。噴水。美しい庭園。
そして、玄関。
エリアナが馬車から降りると、メイドたちが一列に並んでいた。
「皇妃陛下、お帰りなさいませ」
一斉に、頭を下げる。
エリアナは、戸惑いながらも頭を下げた。
「よろしくお願いします」
メイド長が、前に出た。
「私が、皇妃陛下付きのメイド長、マルタでございます」
年配の女性。優しい目。
「お部屋にご案内いたします」
エリアナは、マルタに従って宮殿の中へ入った。
長い廊下。高い天井。シャンデリア。絵画。彫刻。
全てが豪華で、美しい。
エリアナの部屋は、宮殿の上階にあった。
扉を開けると、広い部屋。
天蓋付きのベッド。豪華な家具。大きな窓。
窓からは、王都の街並みが一望できる。
「お気に召しましたでしょうか」
マルタが、尋ねる。
エリアナは、頷いた。
「はい。素晴らしいです」
だが、内心では戸惑っていた。
こんな豪華な部屋。
自分には、似合わない気がする。
その時、扉が開いた。
カイザーが、入ってきた。
「エリアナ、来たか」
カイザーの声が、温かい。
エリアナは、微笑んだ。
「はい」
カイザーが、エリアナの手を取った。
「見せたいものがある」
カイザーは、エリアナを連れて宮殿の庭園へ向かった。
庭園の一角。
そこには、新しく作られた建物があった。
ガラス張りの温室。
中には、無数の薬草が植えられている。
エリアナは、息を呑んだ。
「これは……」
「お前専用の薬草園だ」
カイザーが、誇らしげに言う。
「ここで、お前の研究を続けろ」
エリアナは、温室の中に入った。
ラベンダー、カモミール、セージ。
辺境で育てていた薬草が、全て揃っている。
それだけではない。
珍しい薬草。高価な薬草。
全てが、丁寧に植えられている。
エリアナの目から、涙が溢れた。
「カイザー……」
カイザーが、エリアナの肩を抱いた。
「お前が幸せなら、俺も幸せだ」
エリアナは、カイザーに寄り添った。
「ありがとうございます」
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
「これから、毎晩ここに来る」
「毎晩?」
「ああ。お前の研究を手伝う」
カイザーが、微笑む。
「名目上はな」
エリアナは、笑った。
「名目上?」
「本当は、お前と一緒にいたいだけだ」
カイザーの声が、優しい。
エリアナの胸が、温かくなった。
その夜から、カイザーは毎晩薬草園を訪れた。
エリアナが薬草を調合する隣で、カイザーが座っている。
「この薬草は、何に効くんだ」
カイザーが、尋ねる。
「鎮痛作用です」
エリアナが、答える。
「これと、これを組み合わせると、効果が高まります」
カイザーが、興味深そうに見ている。
「お前は、本当に賢いな」
エリアナは、微笑んだ。
「前世の知識があるだけです」
「それでも、すごい」
カイザーが、エリアナの手を取る。
「俺の誇りだ」
エリアナの顔が、赤くなる。
二人は、並んで薬草を眺めた。
静かな時間。
幸福な時間。
日が経つにつれ、カイザーの溺愛は加速していった。
ある日の朝、エリアナが部屋で目を覚ますと、カイザーが既に部屋にいた。
テーブルに、朝食が並べられている。
「おはよう、エリアナ」
カイザーが、微笑む。
「カイザー……どうして?」
「一緒に朝食を取りたかった」
カイザーが、椅子を引く。
「座れ」
エリアナは、椅子に座った。
カイザーが、向かいに座る。
「今日は、何を食べたい」
カイザーが、尋ねる。
エリアナは、戸惑いながらも答えた。
「パンと、スープを」
カイザーが、パンを取り、エリアナの皿に置く。
スープを注ぐ。
「食べろ」
カイザーの声が、優しい。
エリアナは、パンを一口食べた。
美味しい。
カイザーが、満足そうに微笑む。
「お前が食べている姿を見るのが、好きだ」
エリアナの顔が、赤くなる。
朝食の後、カイザーがエリアナの髪を梳かし始めた。
「カイザー、自分でできます」
エリアナが、言う。
「いや、俺がやる」
カイザーが、優しく髪を梳かす。
丁寧に。愛おしそうに。
「お前の髪は、綺麗だ」
カイザーが、囁く。
「お前の全てが、愛おしい」
エリアナは、鏡の中のカイザーを見た。
その目は、本当に愛おしそうに、エリアナを見ている。
エリアナの胸が、温かくなった。
幸福。
こんなに幸福でいいのか。
エリアナは、そう思った。
ある日、カイザーが重要な会議に出ていた時のこと。
エリアナが、少し体調を崩した。
軽い頭痛。
メイドが、心配そうに尋ねる。
「皇妃陛下、大丈夫ですか」
「大丈夫です。少し休めば」
だが、メイドは慌てて走っていった。
しばらくして、カイザーが部屋に飛び込んできた。
「エリアナ!」
カイザーの声が、焦っている。
「どうした! どこが痛い!」
エリアナは、驚いた。
「カイザー、会議は」
「会議など、どうでもいい」
カイザーが、エリアナを抱きしめる。
「お前が体調を崩したと聞いて」
「ただの頭痛です。大したことありません」
「大したことある」
カイザーが、エリアナの額に手を当てる。
「熱はないな」
「本当に、大丈夫です」
エリアナが、微笑む。
カイザーは、しばらくエリアナを見つめていた。
そして、溜息をついた。
「エリアナが風邪なら、国政など後回しだ」
カイザーが、呟く。
エリアナは、笑った。
「そんな、大袈裟な」
「大袈裟ではない」
カイザーが、真剣な顔で言う。
「お前が、俺の全てだ」
エリアナの胸が、温かくなった。
後で、メイド長が教えてくれた。
カイザーが会議を中座した時、大臣たちは困惑していたと。
「陛下、会議の途中ですが」
「エリアナが体調を崩した。会議など後回しだ」
カイザーは、そう言い残して去っていったらしい。
エリアナは、少し申し訳なく思った。
だが、同時に幸福だった。
カイザーが、自分をこんなに大切にしてくれる。
それだけで、十分だった。
数週間後、エリアナはカイザーに提案した。
「辺境の村を、訪れたいのです」
カイザーが、エリアナを見る。
「辺境?」
「はい。村人たちに、会いたいのです」
エリアナの目が、真剣だった。
カイザーは、頷いた。
「わかった。一緒に行こう」
翌週、エリアナとカイザーは辺境へ向かった。
馬車が、村に到着する。
村人たちが、駆け寄ってくる。
「皇妃様!」
「お帰りなさい!」
エリアナは、馬車から降りた。
村人たちが、笑顔で迎える。
「皇妃様、お元気そうで」
老村長が、涙ぐんでいる。
エリアナは、微笑んだ。
「皆さんも、お元気そうで」
カイザーも、馬車から降りた。
村人たちが、慌てて跪く。
「陛下!」
カイザーが、手を上げる。
「跪くな。俺は、お前たちの友だ」
村人たちが、驚いた顔。
だが、すぐに笑顔になった。
エリアナとカイザーは、村を歩いた。
薬草園は、大規模に拡張されていた。
何倍もの広さ。無数の薬草。
「すごい……」
エリアナが、感嘆する。
「皇妃様が残してくれた種を、大切に育てました」
若い男が、誇らしげに言う。
「今では、王都にも出荷しています」
エリアナは、嬉しかった。
村が、豊かになっている。
カイザーが、エリアナの手を握った。
「ここが、俺たちの原点だ」
カイザーの声が、温かい。
エリアナは、頷いた。
「はい」
二人は、並んで薬草園を歩いた。
村の子供たちが、駆け寄ってくる。
「皇妃様!」
「陛下!」
子供たちが、花を渡す。
エリアナとカイザーは、笑顔で受け取った。
銀狼も、村にいた。
エリアナを見ると、駆け寄ってくる。
尾を振り、喜んでいる。
エリアナは、銀狼を抱きしめた。
「久しぶり」
銀狼が、小さく鳴く。
カイザーが、銀狼の頭を撫でた。
「お前も、元気だったか」
銀狼が、カイザーを見上げる。
三人は、並んで村を歩いた。
穏やかな時間。
スローライフの幸福。
エリアナは、心から思った。
ここが、自分の居場所。
王宮も、辺境も。
どちらも、自分の居場所。
カイザーがいて、村人たちがいて、銀狼がいる。
それだけで、十分だった。
数日後、王都で舞踏会が開かれることになった。
エリアナの、社交界デビュー。
エリアナは、緊張していた。
豪華なドレスを着て、鏡の前に立つ。
深い青のドレス。銀色の刺繍。宝石の装飾。
メイドたちが、エリアナの髪を結い上げる。
化粧を施す。
鏡の中のエリアナは、まるで別人のように美しかった。
だが、エリアナは不安だった。
貴族たちは、自分を受け入れてくれるのか。
追放された令嬢。
そんな過去を、皆知っている。
扉が開いた。
カイザーが、入ってくる。
黒い礼服を着た、その姿は威厳に満ちている。
だが、エリアナを見た瞬間、目が優しくなった。
「美しい」
カイザーが、囁く。
エリアナの頬が、赤くなる。
「ありがとうございます」
カイザーが、手を差し出した。
「行くぞ」
エリアナは、カイザーの手を取った。
二人は、舞踏会場へ向かった。
大広間。
シャンデリアが輝き、音楽が流れている。
貴族たちが、豪華な衣装を纏って談笑している。
エリアナとカイザーが入場すると、一斉に視線が集まった。
「陛下だ」
「皇妃陛下も」
ざわめきが、広がる。
エリアナは、緊張で手が震えた。
カイザーが、その手を握った。
「俺の隣にいるだけでいい」
カイザーの声が、耳元で囁く。
エリアナは、頷いた。
貴族たちが、次々と近づいてくる。
「陛下、お久しぶりでございます」
「皇妃陛下、お目にかかれて光栄です」
エリアナは、一人一人に丁寧に挨拶した。
だが、陰で囁く声が聞こえる。
「あの方が、皇妃様?」
「元は、追放された令嬢だそうよ」
「信じられないわ」
エリアナの胸が、痛んだ。
だが、表情には出さない。
堂々と、微笑む。
カイザーが、エリアナの腰に手を回した。
「お前は、誰よりも美しい」
カイザーが、耳元で囁く。
「誰よりも、強い」
エリアナの心が、温かくなった。
そうだ。
もう、過去には囚われない。
エリアナは、顔を上げた。
堂々と、貴族たちを見つめる。
カイザーと共に、舞踏会を楽しむ。
音楽が、流れる。
カイザーが、エリアナを舞踏へ誘った。
二人は、踊り始めた。
優雅に。美しく。
貴族たちが、その姿を見つめている。
囁く声は、もう聞こえない。
ただ、音楽と、カイザーの温もりだけ。
エリアナは、微笑んだ。
幸福。
これが、自分の人生。
もう、誰にも奪わせない。
カイザーが、エリアナを見つめる。
その目には、愛が溢れていた。
「愛している、エリアナ」
カイザーが、囁く。
エリアナの目から、涙が溢れそうになった。
だが、堪えた。
「私も、愛しています」
エリアナが、囁き返す。
二人は、踊り続けた。
幸福な夜。
新しい人生の始まり。
豪華な馬車が、エリアナを辺境から王都へ運ぶ。
カイザーは、既に先に戻っていた。
馬車が王都の門を抜ける。
石畳の道。高い建物。行き交う人々。
そして、宮殿。
白い壁。高い塔。金色の装飾。
エリアナは、窓から宮殿を見上げた。
こんな場所に、自分が住むのか。
信じられない。
馬車が、宮殿の門を抜ける。
広い中庭。噴水。美しい庭園。
そして、玄関。
エリアナが馬車から降りると、メイドたちが一列に並んでいた。
「皇妃陛下、お帰りなさいませ」
一斉に、頭を下げる。
エリアナは、戸惑いながらも頭を下げた。
「よろしくお願いします」
メイド長が、前に出た。
「私が、皇妃陛下付きのメイド長、マルタでございます」
年配の女性。優しい目。
「お部屋にご案内いたします」
エリアナは、マルタに従って宮殿の中へ入った。
長い廊下。高い天井。シャンデリア。絵画。彫刻。
全てが豪華で、美しい。
エリアナの部屋は、宮殿の上階にあった。
扉を開けると、広い部屋。
天蓋付きのベッド。豪華な家具。大きな窓。
窓からは、王都の街並みが一望できる。
「お気に召しましたでしょうか」
マルタが、尋ねる。
エリアナは、頷いた。
「はい。素晴らしいです」
だが、内心では戸惑っていた。
こんな豪華な部屋。
自分には、似合わない気がする。
その時、扉が開いた。
カイザーが、入ってきた。
「エリアナ、来たか」
カイザーの声が、温かい。
エリアナは、微笑んだ。
「はい」
カイザーが、エリアナの手を取った。
「見せたいものがある」
カイザーは、エリアナを連れて宮殿の庭園へ向かった。
庭園の一角。
そこには、新しく作られた建物があった。
ガラス張りの温室。
中には、無数の薬草が植えられている。
エリアナは、息を呑んだ。
「これは……」
「お前専用の薬草園だ」
カイザーが、誇らしげに言う。
「ここで、お前の研究を続けろ」
エリアナは、温室の中に入った。
ラベンダー、カモミール、セージ。
辺境で育てていた薬草が、全て揃っている。
それだけではない。
珍しい薬草。高価な薬草。
全てが、丁寧に植えられている。
エリアナの目から、涙が溢れた。
「カイザー……」
カイザーが、エリアナの肩を抱いた。
「お前が幸せなら、俺も幸せだ」
エリアナは、カイザーに寄り添った。
「ありがとうございます」
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
「これから、毎晩ここに来る」
「毎晩?」
「ああ。お前の研究を手伝う」
カイザーが、微笑む。
「名目上はな」
エリアナは、笑った。
「名目上?」
「本当は、お前と一緒にいたいだけだ」
カイザーの声が、優しい。
エリアナの胸が、温かくなった。
その夜から、カイザーは毎晩薬草園を訪れた。
エリアナが薬草を調合する隣で、カイザーが座っている。
「この薬草は、何に効くんだ」
カイザーが、尋ねる。
「鎮痛作用です」
エリアナが、答える。
「これと、これを組み合わせると、効果が高まります」
カイザーが、興味深そうに見ている。
「お前は、本当に賢いな」
エリアナは、微笑んだ。
「前世の知識があるだけです」
「それでも、すごい」
カイザーが、エリアナの手を取る。
「俺の誇りだ」
エリアナの顔が、赤くなる。
二人は、並んで薬草を眺めた。
静かな時間。
幸福な時間。
日が経つにつれ、カイザーの溺愛は加速していった。
ある日の朝、エリアナが部屋で目を覚ますと、カイザーが既に部屋にいた。
テーブルに、朝食が並べられている。
「おはよう、エリアナ」
カイザーが、微笑む。
「カイザー……どうして?」
「一緒に朝食を取りたかった」
カイザーが、椅子を引く。
「座れ」
エリアナは、椅子に座った。
カイザーが、向かいに座る。
「今日は、何を食べたい」
カイザーが、尋ねる。
エリアナは、戸惑いながらも答えた。
「パンと、スープを」
カイザーが、パンを取り、エリアナの皿に置く。
スープを注ぐ。
「食べろ」
カイザーの声が、優しい。
エリアナは、パンを一口食べた。
美味しい。
カイザーが、満足そうに微笑む。
「お前が食べている姿を見るのが、好きだ」
エリアナの顔が、赤くなる。
朝食の後、カイザーがエリアナの髪を梳かし始めた。
「カイザー、自分でできます」
エリアナが、言う。
「いや、俺がやる」
カイザーが、優しく髪を梳かす。
丁寧に。愛おしそうに。
「お前の髪は、綺麗だ」
カイザーが、囁く。
「お前の全てが、愛おしい」
エリアナは、鏡の中のカイザーを見た。
その目は、本当に愛おしそうに、エリアナを見ている。
エリアナの胸が、温かくなった。
幸福。
こんなに幸福でいいのか。
エリアナは、そう思った。
ある日、カイザーが重要な会議に出ていた時のこと。
エリアナが、少し体調を崩した。
軽い頭痛。
メイドが、心配そうに尋ねる。
「皇妃陛下、大丈夫ですか」
「大丈夫です。少し休めば」
だが、メイドは慌てて走っていった。
しばらくして、カイザーが部屋に飛び込んできた。
「エリアナ!」
カイザーの声が、焦っている。
「どうした! どこが痛い!」
エリアナは、驚いた。
「カイザー、会議は」
「会議など、どうでもいい」
カイザーが、エリアナを抱きしめる。
「お前が体調を崩したと聞いて」
「ただの頭痛です。大したことありません」
「大したことある」
カイザーが、エリアナの額に手を当てる。
「熱はないな」
「本当に、大丈夫です」
エリアナが、微笑む。
カイザーは、しばらくエリアナを見つめていた。
そして、溜息をついた。
「エリアナが風邪なら、国政など後回しだ」
カイザーが、呟く。
エリアナは、笑った。
「そんな、大袈裟な」
「大袈裟ではない」
カイザーが、真剣な顔で言う。
「お前が、俺の全てだ」
エリアナの胸が、温かくなった。
後で、メイド長が教えてくれた。
カイザーが会議を中座した時、大臣たちは困惑していたと。
「陛下、会議の途中ですが」
「エリアナが体調を崩した。会議など後回しだ」
カイザーは、そう言い残して去っていったらしい。
エリアナは、少し申し訳なく思った。
だが、同時に幸福だった。
カイザーが、自分をこんなに大切にしてくれる。
それだけで、十分だった。
数週間後、エリアナはカイザーに提案した。
「辺境の村を、訪れたいのです」
カイザーが、エリアナを見る。
「辺境?」
「はい。村人たちに、会いたいのです」
エリアナの目が、真剣だった。
カイザーは、頷いた。
「わかった。一緒に行こう」
翌週、エリアナとカイザーは辺境へ向かった。
馬車が、村に到着する。
村人たちが、駆け寄ってくる。
「皇妃様!」
「お帰りなさい!」
エリアナは、馬車から降りた。
村人たちが、笑顔で迎える。
「皇妃様、お元気そうで」
老村長が、涙ぐんでいる。
エリアナは、微笑んだ。
「皆さんも、お元気そうで」
カイザーも、馬車から降りた。
村人たちが、慌てて跪く。
「陛下!」
カイザーが、手を上げる。
「跪くな。俺は、お前たちの友だ」
村人たちが、驚いた顔。
だが、すぐに笑顔になった。
エリアナとカイザーは、村を歩いた。
薬草園は、大規模に拡張されていた。
何倍もの広さ。無数の薬草。
「すごい……」
エリアナが、感嘆する。
「皇妃様が残してくれた種を、大切に育てました」
若い男が、誇らしげに言う。
「今では、王都にも出荷しています」
エリアナは、嬉しかった。
村が、豊かになっている。
カイザーが、エリアナの手を握った。
「ここが、俺たちの原点だ」
カイザーの声が、温かい。
エリアナは、頷いた。
「はい」
二人は、並んで薬草園を歩いた。
村の子供たちが、駆け寄ってくる。
「皇妃様!」
「陛下!」
子供たちが、花を渡す。
エリアナとカイザーは、笑顔で受け取った。
銀狼も、村にいた。
エリアナを見ると、駆け寄ってくる。
尾を振り、喜んでいる。
エリアナは、銀狼を抱きしめた。
「久しぶり」
銀狼が、小さく鳴く。
カイザーが、銀狼の頭を撫でた。
「お前も、元気だったか」
銀狼が、カイザーを見上げる。
三人は、並んで村を歩いた。
穏やかな時間。
スローライフの幸福。
エリアナは、心から思った。
ここが、自分の居場所。
王宮も、辺境も。
どちらも、自分の居場所。
カイザーがいて、村人たちがいて、銀狼がいる。
それだけで、十分だった。
数日後、王都で舞踏会が開かれることになった。
エリアナの、社交界デビュー。
エリアナは、緊張していた。
豪華なドレスを着て、鏡の前に立つ。
深い青のドレス。銀色の刺繍。宝石の装飾。
メイドたちが、エリアナの髪を結い上げる。
化粧を施す。
鏡の中のエリアナは、まるで別人のように美しかった。
だが、エリアナは不安だった。
貴族たちは、自分を受け入れてくれるのか。
追放された令嬢。
そんな過去を、皆知っている。
扉が開いた。
カイザーが、入ってくる。
黒い礼服を着た、その姿は威厳に満ちている。
だが、エリアナを見た瞬間、目が優しくなった。
「美しい」
カイザーが、囁く。
エリアナの頬が、赤くなる。
「ありがとうございます」
カイザーが、手を差し出した。
「行くぞ」
エリアナは、カイザーの手を取った。
二人は、舞踏会場へ向かった。
大広間。
シャンデリアが輝き、音楽が流れている。
貴族たちが、豪華な衣装を纏って談笑している。
エリアナとカイザーが入場すると、一斉に視線が集まった。
「陛下だ」
「皇妃陛下も」
ざわめきが、広がる。
エリアナは、緊張で手が震えた。
カイザーが、その手を握った。
「俺の隣にいるだけでいい」
カイザーの声が、耳元で囁く。
エリアナは、頷いた。
貴族たちが、次々と近づいてくる。
「陛下、お久しぶりでございます」
「皇妃陛下、お目にかかれて光栄です」
エリアナは、一人一人に丁寧に挨拶した。
だが、陰で囁く声が聞こえる。
「あの方が、皇妃様?」
「元は、追放された令嬢だそうよ」
「信じられないわ」
エリアナの胸が、痛んだ。
だが、表情には出さない。
堂々と、微笑む。
カイザーが、エリアナの腰に手を回した。
「お前は、誰よりも美しい」
カイザーが、耳元で囁く。
「誰よりも、強い」
エリアナの心が、温かくなった。
そうだ。
もう、過去には囚われない。
エリアナは、顔を上げた。
堂々と、貴族たちを見つめる。
カイザーと共に、舞踏会を楽しむ。
音楽が、流れる。
カイザーが、エリアナを舞踏へ誘った。
二人は、踊り始めた。
優雅に。美しく。
貴族たちが、その姿を見つめている。
囁く声は、もう聞こえない。
ただ、音楽と、カイザーの温もりだけ。
エリアナは、微笑んだ。
幸福。
これが、自分の人生。
もう、誰にも奪わせない。
カイザーが、エリアナを見つめる。
その目には、愛が溢れていた。
「愛している、エリアナ」
カイザーが、囁く。
エリアナの目から、涙が溢れそうになった。
だが、堪えた。
「私も、愛しています」
エリアナが、囁き返す。
二人は、踊り続けた。
幸福な夜。
新しい人生の始まり。


