*番外* リトの愚痴
我が名はリト。
この名は聖女ジェシカからもらったものだ。
ジェシカは我を大きな犬だと思っているようだがそれは違う。
我は聖女が誕生すると、その地に生を受ける。
聖獣と呼ばれる存在だ。
犬ではない。
けして犬ではないのだ。
生を受けてすぐにジェシカに会いに行ったが、その姿は見ることは出来なかった。屋敷の中にいることは分かっているのにどうして……。毎日のように屋敷を見つめてはその姿を探した。
しかし何年たっても聖女の姿を見ることは出来ず、悲しみに暮れた。
そんなある日、屋敷を観察していると門番に見つかった。長い槍で右足を突かれ、傷は深くは無いが血が流れた。
「きゅん」
小さく鳴いて我は右足を引きずりながら生まれた森に帰った。
この森は魔素が多く、暮らしやすい。
ここなら傷も癒えるのが早いはずだ。
それから我は聖女の屋敷に行くのをやめた。
生存していることは分かっている。
我と聖女は一対だ。
聖女が死ねば我も死ぬ。
我が生きているということは、聖女も生きているということだ。
しかし気になることがある。
日に日に我の体が黒く変化していることだ。
それは聖女が傷つき、悲しんでいる証だ。
そばで聖女に寄り添いたい、そう願うのにそれは叶わない。
そんなある日、聖女の気配を近くに感じた。我は急いでその気配に向かって走った。
聖女だ。
やっと、やっと会える。


