「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい


「忌々しい雨だな」

「『魔王の斑紋』連れで、不気味なのにこの雨って」

「呪いだったりしてな」

「やめろよ。俺、死にたくねえよ」 

「早く雨やんでくれねえかな」

 そんな傭兵と騎兵たちの願いもむなしく、雨は降り続いていた。

 ガタガタと揺れるぼろ馬車の中で外の様子を伺っていると、外が騒がしくなった。そして馬車が大きく傾いた。

「きゃーー!」

 外に視線を向けると、馬車の車輪が外れ崖に落ちそうになっている。

「やばいぞ!どうにかしないと!」

「どうにかって?!」

「ああ、ダメだ!落ちるぞ!」

 騎兵の一人がそう叫んだ時だった。ガタッと音を立てて馬車がさらに傾いた。そしておとずれる浮遊感。

 落ちる……。

 崖の下は川だ。

 ここ最近の雨のせいで川は増水し濁流となっている。普通の人間なら助からないだろう。しかし私は『魔王の斑紋』を持つものだ。勇者以外に私を殺すことは出来ない。すなわち私はこんな濁流なんて怖くない。

 目を閉じて私は濁流に身を任せた。