「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい


 *

 王都へと向かう道中、俺はルノアから言われた言葉を整理していた。それは王の御前で述べる言葉だ。

 王の前で洞窟の石碑について話をする。この世界の真実を話し、魔王の斑紋についてと聖女についての話をする。真実を話して信じてもらえなければ、この薬を見せてジェシカが聖女として成長していることを明かす。

 うまくいくだろうか……。

 大きく溜息をつきながら、俺は右手にはめた指輪を見た。これはエリクサーの小瓶を手渡された後、ジェシカにもらったものだった。これは強い衝撃や魔法を一度だけ防ぐことが出来るらしい。その銀の指輪には小さな空色の青い石がはめ込まれていた。それはジェシカの色だった。指輪をもらって喜んでいると、ジェシカの指にも色違いの指輪がはめられていた。

 それは金の指輪に空色の青い石で……。

「俺の色?」

 そう言うと、ジェシカの顔が真っ赤に染まった。

 真っ赤に染まったジェシカが可愛くて、自分たちの色をお互いに持ちたいというジェシカの言葉が、けなげで愛らしくて、思わず強くジェシカを抱きしめたことを思い出す。

 俺はジェシカを守ることが出来るだろうか。

 王城にいる重鎮たちをも黙らさることが出来るのか、王を納得させることが出来るのか、不安しかない。

 信じてもらえなかったら……。

 魔王を倒せと命じられたら……。

 俺はジェシカに向かって剣を振り下ろすことになるのかもと、それを考えると恐ろしくて背筋が凍る。血の海の中で倒れるジェシカを想像した。

 想像でも恐ろしかった。

 ジェシカを失うなんて考えられない。

 悲しい想像を打ち消すため、物理的な動きで首を左右に何度も振ってから前を見た。

 うまくいってほしい。

 どうか、俺たちの幸せのために。

 俺たちの未来のために。

 俺は祈らずにはいられなかった。

 俺たちが幸せに暮らすために、王に述べる言葉を何度も確認しながら王都を目指した。