寵愛よ、捧げリーベスネスト

「今日からは私たちが家族よ。よろしくね」

 中学生のともあきは嘆いていた。
 彼はアナボリックステロイドを知る博識な子供だが、家族というものには耐性がなかったのだ。

 加えて母となる女性・あきこは魅力的な女性であり、父となる男・ゆうきはイケメンで金持ち。

「お前はもう何も心配しなくていい。全部俺が金出してやるからな」

 逆立った黎髪を優しくなでるゆうき。ともあきは父性の浸食に抗えず視床下部を乱し感情を炸裂していく。

「父上ぇ……ッ!!」

 あきこも聖母マリアの如き壮麗さでともあきを慈しみ愛を唄う。

「安心してともあき。私たちはどこにも行かないわ」

 抱きしめ合う寵愛のFESTIVAL。家族愛は今確定され充足理由律をオーバーライドする。最早彼らに宇宙論的証明はいらない。

「おうハニー。さぁ帰ろう。我らがMEIN ZUHAUSEへ!!」
「そうねハズバンド。それこそ家族愛よ」

 ともあきは二人に連れられ駐車場へ行くと、停めてあったフェラーリ・ローマの後席に乗せられる。プロサングエではない。

 隣に美少女がいた。

「私あかり。おともだちになりましょ」

 彼女はロリータファッションだったが、似合い過ぎて反吐が出る。

「緊張しちゃいます」

 産声をあげる赤子のように想い繋ぐ声の糸。

「きっと楽しくなるわ」

 あきこが優しく諭す。

「そうだぞ。お前を愛するのはこれからの未来だ」

 全てを開くハルモニアー。父と母の我が子への愛情を受けたともあきは、もう喋らない。

「感謝いたします」

 進む時の世界。流れるヨーデルの音。母は歌いあかりは手拍子、父はアクセルで空間を盛り上げる。ときめく夜闇の咆哮は誰も止められない。

 グレゴリオ聖歌は信号待ちを高貴なる祈りに変え、ブレーキ音を合図に落ち着くホーメイがバトンを受け取る。これはまさしく世界のファクター。全人が尊ぶべき神々の祝福。

「さぁ神へ感謝しましょう!」
「そうだな! 箱庭をスカビオサで満たそう!」

 二人の愛宴は終わらない。重なり続け不可視の演者は踊り続ける。
 
 だがそれも軈て終了する。

「……家についたぞともあき」

 父の声が聞こえた。

 まるで空から舞い降りたエンジェル。不安を払う、犇めきのSUNSHINE。

 「……ここは」

 ともあきは今日から彼らの息子だ。