私のウソをホントに変えてくれた、桃銀の魔笛


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"イザナミノミコトと イザナギノミコトは 

黄泉の国と 現世に 離ればなれとなってしまいました。


せっかく二神は 再び出会えたのに 仲たがいしてしまいます。


そこに いきなり現れた ククリ姫。


彼女は 夫の神 イザナギノミコトに 何かを語りかけました。

彼は ククリ姫に感謝しました。

イザナミノミコトと イザナギノミコトは 縁を結びなおすことが できたのです。"

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塩川ククリは、絵本の最後のページを読むと、はあーっとため息をついて本の上に突っ伏した。

ここは、子供の本の専門店。
彼女の両親が、日本初の万年歩行者天国である『買物公園』に構えている店だ。

さっきまで、引っ越していく幼馴染みを旭川駅まで見送りに行っていた。

その帰りに一階の売り場で手に取った絵本には、水彩画の挿絵とともに、そんな話が描かれていた。
前にも読んだことがある……ナギと一緒に。

書かれている文字は小さめで、フリガナはふられているものの、ちょっと難しい漢字も使われているので、大人用の絵本かも知れない。
その絵本の背表紙が目に入った時、さらに心が重くなったが、その本を手にとらずには、いられなかった。


雪解けが始まりかけた季節。

屋根から落ちてくる水滴は、一粒一粒に光を宿し、春の始まりに北国の人々は心躍らせる季節だが、ククリの心境はそれからは、ほど遠かった。


本を閉じ、読書コーナーの椅子に座ってうなだれる。

『ククリ姫』と名前はそっくりなのに、自分は彼女と反対のことをしてしまった。


後悔先に立たず。


旅立つナギの元に、親友のナミは現れなかった。

そして、列車の窓から私を見つめる、ナギの恨めしそうなまなざし。

私は、二人にずっと恨まれ続けて生きなければならないのだろうか。
何をしたら許してくれるのだろうか。



小学六年生の本好きな女の子は、もう一度、似たようなことわざを口にした。


覆水盆に返らず。