「ミラ!」
ミラジェーンが執務室で書類をめくっていると、エースが顔を出した。
今日は若手財務官の変装はしておらず、普段着らしいシャツとベストに、すっきりしたボトムを合わせていた。
髪は変装なのか白金色に変えられていたが、瞳はいつものアメジスト色に輝いていた。
「殿下、いかがなさいましたか?」
「今日の昼食を一緒に摂りたくて、誘いにきたんだ。どう?」
「……はい、喜んでご一緒させていただきます」
ミラジェーンが小さく頷くと、エースははにかんだ。
「やった。じゃあ昼時に第三温室で。何か食べたいものはある? 今ならリクエストできるよ」
「えっと……」
顔を曇らせたミラジェーンに、エースは首をかしげた。
いつもであれば、
「そのようなワガママを申せませんわ」
「では先日のお料理が美味しかったので、またいただきたいです」
と、何かしらすぐに答えるのだが、今のミラジェーンは困った顔で口ごもっていた。
「思いつかなければ、俺の好きなものでいいかな」
「あ……はい、お願いします」
エースは笑みを浮かべたまま机を回り、ミラジェーンの隣に立った。
そして彼女の指先を取った。
「今日のドレスもガウンも、よく似合っているよ」
「……ありがとうございます、殿下」
「じゃあまた後で。俺は人気者だからね、たくさんのサインが求められているんだ」
「ふふ、早く行かないと秘書が探しに参りますわよ」
「まったく、人気者は辛いよ」
ようやく笑みを浮かべたミラジェーンに、エースも同じように微笑み、執務室を出ていった。
「殿下はどうなさったのかしら」
残されたミラジェーンは、ひとり呟いた。
いつもより何か気遣われた気がしたが、その理由も、具体的に何がどう違ったのか、うまく説明できなかった。
しかし、ミラジェーンの目の前には書類が山と積まれている。
エースのことばかり考えているわけにもいかず、ミラジェーンはすぐに仕事に戻った。
ミラジェーン付きの侍女は「どうもこうもありません!」と声を大にしたいのをこらえ、主のための替えのインクを補充した。
ミラジェーンが執務室で書類をめくっていると、エースが顔を出した。
今日は若手財務官の変装はしておらず、普段着らしいシャツとベストに、すっきりしたボトムを合わせていた。
髪は変装なのか白金色に変えられていたが、瞳はいつものアメジスト色に輝いていた。
「殿下、いかがなさいましたか?」
「今日の昼食を一緒に摂りたくて、誘いにきたんだ。どう?」
「……はい、喜んでご一緒させていただきます」
ミラジェーンが小さく頷くと、エースははにかんだ。
「やった。じゃあ昼時に第三温室で。何か食べたいものはある? 今ならリクエストできるよ」
「えっと……」
顔を曇らせたミラジェーンに、エースは首をかしげた。
いつもであれば、
「そのようなワガママを申せませんわ」
「では先日のお料理が美味しかったので、またいただきたいです」
と、何かしらすぐに答えるのだが、今のミラジェーンは困った顔で口ごもっていた。
「思いつかなければ、俺の好きなものでいいかな」
「あ……はい、お願いします」
エースは笑みを浮かべたまま机を回り、ミラジェーンの隣に立った。
そして彼女の指先を取った。
「今日のドレスもガウンも、よく似合っているよ」
「……ありがとうございます、殿下」
「じゃあまた後で。俺は人気者だからね、たくさんのサインが求められているんだ」
「ふふ、早く行かないと秘書が探しに参りますわよ」
「まったく、人気者は辛いよ」
ようやく笑みを浮かべたミラジェーンに、エースも同じように微笑み、執務室を出ていった。
「殿下はどうなさったのかしら」
残されたミラジェーンは、ひとり呟いた。
いつもより何か気遣われた気がしたが、その理由も、具体的に何がどう違ったのか、うまく説明できなかった。
しかし、ミラジェーンの目の前には書類が山と積まれている。
エースのことばかり考えているわけにもいかず、ミラジェーンはすぐに仕事に戻った。
ミラジェーン付きの侍女は「どうもこうもありません!」と声を大にしたいのをこらえ、主のための替えのインクを補充した。



