婚約者にバカにされ続けた侯爵令嬢が「ざまぁ」するに至るまで

 エースと別れたミラジェーンが両親のもとへ向かう途中、エリオットが駆け寄ってきた。


「ミラ、さっきバルコニーにいたかい?」

「いいえ、入口までは参りましたが、外には出ておりませんわ。いかがなさいましたか」

「いや、出ていないのならそれでいい」


 エリオットが安心したように微笑んだそのとき、ミラジェーンが王城で時折顔を合わせる貴族が姿を現した。


「こんばんは、ブライズ嬢。こちらが最近ご婚約されたエリオット・オリン公爵令息でいらっしゃいますね。お噂はかねがね伺っております。さぞ素晴らしい方なのでしょうな」

「こんばんは。本日はお越しいただきありがとうございます。はい、とてもお優しい方ですのよ。エリオット様、こちらの伯爵は西部に領地をお持ちでいらして、最近は行路の整備に精を出されていらっしゃいますの」

「そうなのですか」


 ミラジェーンが頷くと、エリオットも笑顔で会釈した。


「はい、東部ではインサラータ伯爵が交易で幅を利かせていらっしゃいますからね。西部も負けてはいられませんよ」

「ふふ、北部の子爵も同じようなことを仰っていましたわ。北部ならではの観光に力を入れたいのだとか」

「地域によって強みは異なりますからね。それぞれの特徴を生かしていくためにも、ブライズ侯爵家には財布の紐を緩めていただきたく存じます」

「それは他の予算と試算の兼ね合い次第ですわね」

「はは、ブライズ嬢はしっかりしていらっしゃる。エリオット殿もこのようなしっかりした女性を娶れるとは羨ましい。オリン公爵家は繁栄を約束されたも同然ではありませんか」

「まあ、お上手ですこと」

「ええ、彼女には我が家の発展への尽力を期待しています。よろしく頼むよ」

「もちろんでございます」


 ミラジェーンは穏やかに微笑み、その伯爵と挨拶を交わした。

 その後も同様の挨拶が続き、終えた頃には、エリオットは疲れ果てていた。


「……こんなにも挨拶をしなければならないものなのか」

「お付き合いいただきありがとうございました。先程の控え室にお茶と軽食を用意しておりますので、休憩なさってください。身内の者しか通しておりませんので、ゆっくりなさってくださいませ」

「そうさせてもらう。その前に僕も知り合いを見送ってこよう。しばらく不在にするが、心配しないでくれ」

「かしこまりました」


 エリオットの背を見送ってから、ミラジェーンは両親と兄と合流し、招待客を見送った。オリン公爵夫妻と第一王子、ルーシーを控え室に案内し、リサーナとその両親である侯爵夫妻には本日提供した料理の話とドレッシングを土産として渡した。

 そうして、最後にホールに残ったのはエースだった。