ミラジェーンがふと気づくと、エリオットの姿は消えており、代わりにエースがやって来た。
「ミラジェーン・ブライズ嬢。わたしと一曲踊ってくださいませんか?」
「……喜んで、エース殿下」
二人が手を取り合って踊り出すと、曲調はゆったりとしたものへと変わった。
「この楽団は、速い曲だと俺が転ぶと覚えているから助かるよ。ミラ、足は痛くない?」
「まだ大丈夫です」
「お腹は空いていないかい。一曲終えたら、何か食べに行こうか」
「お供いたしますわ。……ですが本日のコルセットはいつもよりきつく、あまり食べられませんの。けれど美味しいごちそうを用意いたしましたから、殿下はたくさんお召し上がりくださいませ」
「それは楽しみだ。でも君とも食事を楽しみたいから、次に城に来たらごちそうを用意させてくれ」
ゆったりと踊りながら、ミラジェーンはエースと取り留めのない会話を続けた。
先程のエリオットとのダンスでは、互いに不慣れで曲についていくのが精一杯であり、ファーストダンスは衆目を集めるため雑談する余裕がなかった。
「ところで、君の婚約者殿は?」
「見当たりませんので、探そうと思っていたところですの。どこかでご友人と話し込んでおられるのではないでしょうか」
「ふうん、ご友人、ね」
エースが意味ありげに呟いたところで曲が終わり、そのまま二人は壁際へ移動してグラスを受け取った。
「おすすめのメニューはある?」
「殿下におすすめするなら、こちらでございましょうか」
「……なに?」
「ピッツァですわ。インサラータ伯爵が隣国から取り入れた品でして、薄いパンの上にトマトソースとチーズを載せて焼いたものです。端が香ばしく、美味しゅうございますよ。今回は片手で召し上がりやすいよう、しっかりと焼かせております」
ミラジェーンが熱心に説明するので、エースはそれならばとピッツァを手に取り、口に運んだ。
黙ったまま一切れ食べ、そのまま二つ目にも手を伸ばした。
「お気に召していただけましたか?」
「うん、とても美味しい。今度、城の料理人にも作り方を教えてやってくれ」
「かしこまりました。それからウサギのパイ包みもぜひお召し上がりください」
社交パーティではあったが、エースは特に社交することもなく、ミラジェーンのすすめに従って食べ続けた。どれもこれも美味しかったため。
「……ごめん、一人でひたすら食べてしまって」
デザートまで食べて満腹になったところで我に返ったエースは、頬を赤くしてミラジェーンに謝ったが、彼女は笑顔のままだった。
「とんでもございません。どれもお口に合って何よりでございます。それに殿下が美味しそうに召し上がってくださったおかげで、他の方々もたくさんお召し上がりくださり、用意した甲斐がございました。よろしければ外に涼みに参りましょうか」
エースは頷いてバルコニーへと歩き出したが、扉の前で足を止めた。
「申し訳ない、挨拶にいかないといけない相手がいたんだった」
「そうですの。ではすぐに参りませんと。どなたでしょうか」
「インサラータ伯爵と、それから君のご友人であるリサーナ侯爵令嬢はどちらかな」
「インサラータ伯爵でしたら、先ほどまで殿下の食べっぷりをご覧になっておりましたが……」
ミラジェーンはバルコニーの入口からホールを見回した。
その隙にエースは、バルコニーの扉をわざと音を立てて閉めた……バルコニーにいた者たちにも聞こえるように。
「ミラジェーン・ブライズ嬢。わたしと一曲踊ってくださいませんか?」
「……喜んで、エース殿下」
二人が手を取り合って踊り出すと、曲調はゆったりとしたものへと変わった。
「この楽団は、速い曲だと俺が転ぶと覚えているから助かるよ。ミラ、足は痛くない?」
「まだ大丈夫です」
「お腹は空いていないかい。一曲終えたら、何か食べに行こうか」
「お供いたしますわ。……ですが本日のコルセットはいつもよりきつく、あまり食べられませんの。けれど美味しいごちそうを用意いたしましたから、殿下はたくさんお召し上がりくださいませ」
「それは楽しみだ。でも君とも食事を楽しみたいから、次に城に来たらごちそうを用意させてくれ」
ゆったりと踊りながら、ミラジェーンはエースと取り留めのない会話を続けた。
先程のエリオットとのダンスでは、互いに不慣れで曲についていくのが精一杯であり、ファーストダンスは衆目を集めるため雑談する余裕がなかった。
「ところで、君の婚約者殿は?」
「見当たりませんので、探そうと思っていたところですの。どこかでご友人と話し込んでおられるのではないでしょうか」
「ふうん、ご友人、ね」
エースが意味ありげに呟いたところで曲が終わり、そのまま二人は壁際へ移動してグラスを受け取った。
「おすすめのメニューはある?」
「殿下におすすめするなら、こちらでございましょうか」
「……なに?」
「ピッツァですわ。インサラータ伯爵が隣国から取り入れた品でして、薄いパンの上にトマトソースとチーズを載せて焼いたものです。端が香ばしく、美味しゅうございますよ。今回は片手で召し上がりやすいよう、しっかりと焼かせております」
ミラジェーンが熱心に説明するので、エースはそれならばとピッツァを手に取り、口に運んだ。
黙ったまま一切れ食べ、そのまま二つ目にも手を伸ばした。
「お気に召していただけましたか?」
「うん、とても美味しい。今度、城の料理人にも作り方を教えてやってくれ」
「かしこまりました。それからウサギのパイ包みもぜひお召し上がりください」
社交パーティではあったが、エースは特に社交することもなく、ミラジェーンのすすめに従って食べ続けた。どれもこれも美味しかったため。
「……ごめん、一人でひたすら食べてしまって」
デザートまで食べて満腹になったところで我に返ったエースは、頬を赤くしてミラジェーンに謝ったが、彼女は笑顔のままだった。
「とんでもございません。どれもお口に合って何よりでございます。それに殿下が美味しそうに召し上がってくださったおかげで、他の方々もたくさんお召し上がりくださり、用意した甲斐がございました。よろしければ外に涼みに参りましょうか」
エースは頷いてバルコニーへと歩き出したが、扉の前で足を止めた。
「申し訳ない、挨拶にいかないといけない相手がいたんだった」
「そうですの。ではすぐに参りませんと。どなたでしょうか」
「インサラータ伯爵と、それから君のご友人であるリサーナ侯爵令嬢はどちらかな」
「インサラータ伯爵でしたら、先ほどまで殿下の食べっぷりをご覧になっておりましたが……」
ミラジェーンはバルコニーの入口からホールを見回した。
その隙にエースは、バルコニーの扉をわざと音を立てて閉めた……バルコニーにいた者たちにも聞こえるように。



