婚約者にバカにされ続けた侯爵令嬢が「ざまぁ」するに至るまで

「……申し訳ありません」


 オリン公爵が頭を下げた。


「お、おやめください。公爵様が頭をお下げになることなど……」

「いえ、わたくしの教育不足です。ファーストダンスまでには説得しますので……今は失礼します」


 オリン公爵夫妻は踵を返し、去っていった。

 ブライズ侯爵一家は、顔を見合わせるしかなかった。


「……ど、どういたしましょう」


 ミラジェーンが口を開くと、ブライズ侯爵が肩をすくめた。


「どうもこうもない。もし時間までにエリオットくんが戻らなければ、そうだな、久しぶりに私たちがファーストダンスを踊ろうか」

「かまいませんわ、あなた。王国一ともてはやされたダンスをお見せいたしましょう」

「そ、そうなのか。聞いたことがないけれど」


 盛り上がる両親を見て、アドルフが驚いた。

 ブライズ夫人は、にこりと微笑んだ。


「ええ、昔からこの人は、わたくしのダンスに首ったけなのよ」

「もてはやしたのは父様か。……まあ、それならそれで、楽しみにしておくよ。なあ、ミラ」

「そうですわねえ。もしくは私とお兄様か、お兄様が今から意中のご令嬢を連れてきてくださってもかまいませんのよ?」

「そうか。では俺の部屋から一番大きいそろばんを取ってきてくれ」


 おどける兄に、ミラジェーンは顔を上げて笑った。