鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した

「でか……」

「コメダならこんなもんじゃない?」

「そうなん? 俺、コメダ初めてなんだよね」

「え? じゃあなんでさっきコメダって即答したのさ」

「……どっちも行ったことなかったから、とりあえず」


 もしかして長谷川、けっこう不器用なタイプ?

 そう見えてきたら、なんだかちょっとかわいく見えてきた。


「それ、全部食べられる?」

「……たぶん」

「大変だったら一切れちょうだい。食べたかったけど、さっき昼食べたばっかだから、全部は厳しくて頼めなかったんだ」

「そういうことなら、一切れくらいならやってもいい」

「ふふ、ありがと。美味しいから嬉しいなあ」


 豆が乗っていた小皿にエビカツサンドを一切れもらって、ありがたくかぶりつく。

 おいしい!

「あー、ていうかさ」


 長谷川がエビカツサンドを頬張ったまま、もごもごと口を開いた。


「仕事中なら、ある程度厳しい言い方するのって普通じゃねえの?」

「限度があるでしょ」

「限度……」


 長谷川はコーヒーをすすってから、口いっぱいだったエビカツサンドをようやく飲み込んだ。

 私の分は美味しすぎて、一瞬でなくなっちゃった……。やっぱり近いうちにひとりで来よう。


「書類に不備があったらさ、『ここ違うから直しておいて』でいいじゃん。わざわざ私の年次についてイヤミ言う必要ないでしょ」

「……うん」

「全体的に誤字脱字を直してほしいなら、普通にそう言えばいいじゃん。百回読ませる必要ないでしょ」

「そうだな……」

「なんか疲れてた? 課長が彼女にフラれたんじゃないかって心配してたけど」


 正確には野次馬だったけど、それはそれだ。

 何もかもを正直に言う必要なんてない。


「フラれてねえ。ていうか、今は彼女いねえよ」

「だよね」

「だよねってなんだよ」

「あ、ごめん。つい。いつも遅くまで仕事してるし、言葉遣いキツイから彼女がいる気がしないなって思ってただけ」


 何もかも正直に言わなくていいって考えたそばから、思いっきり本音を口にしてしまった。

 さすがに怒られるかなと身構えたけど、長谷川は空になった皿を見つめたまま、難しい顔で黙り込んだ。


「えっと、損してると思うんだよね」

「損?」

「うん。長谷川って仕事早いし、周りもよく見えてるでしょ。でも、それをきつい言い方で伝えたら、みんな怯えちゃうし、肝心なこともちゃんと伝わらないし、もったいないよ」


 そのせいで空気も悪くなるし、後輩は私のところに泣きついてくるし、ほんといいことない。

 私ひとりなら同期だし「はいはい」って流せる。でも、そのせいで余計な仕事まで増えるのは普通に迷惑だから、いい機会だしなんとか矯正しておきたかった。