鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した

 廊下にガラガラと台車の音が響いて、私ははっとして長谷川(はせがわ)を見返した。


「言わないのはいいけどさ、でもあんた別に会社でのイメージ良くないよ。キツくて怖いもん」

「は?」


 長谷川が何かを言おうとした途端に、引越し屋さんが「すみません」と口を挟んだ。


「こちらの棚なんですが」

「あ、はい」


 長谷川が振り向いた隙に、私は肩からずり落ちかけていたカバンをかけ直した。


「じゃあ、また月曜日に」

「あ、待て、立花(たちばな)!」

「待たない! お腹空いたから!!」


 私はエレベーターホールまで一気に走って逃げた。

 引越し屋さんが使っていたエレベーターがまだ開いたままだったから、そのまま飛び乗って一階まで降りた。


 我ながら、小学生みたいな逃げ方だった。

 お腹空いたからって。少なくともアラサーの言い訳じゃない。

 長谷川のエプロン姿、写真に撮っておけばよかった。それで仕事中に長谷川がイラつきだしたら見せてやるんだ。


 さっきの姿を思い出してにやにやしながら、私は近所の牛丼屋へ向かった。

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