鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した

 二時間くらい残業してから、席を立った。

 長谷川はまだカタカタとパソコンを叩いていた。


「お先でーす」

「おー、おつかれ」

「……長谷川も適当に切り上げなよ」

「んー」


 顔が死んでるなあ。

 焦点が合ってなさそうな目を見て、なんとなく仏心が湧いたから、引き出しからチョコを二粒出した。


「よかったら食べなよ」

「……なんで?」

「目が死んでるから」


 やっと目があって、長谷川は何度か瞬きをした。


「ありがと」


 今日初めて、私の顔を見たみたいな表情だった。

***

 帰宅して、カバンを玄関に置き、そのまま風呂に向かった。

 シャワーを浴びて、冷蔵庫からビールを出して飲む。


 あー、疲れた。

 空きっ腹にアルコールが染みて、めっちゃ美味しい。金曜日の夜用の、本物のビール美味しい!

 もう一度冷蔵庫を見たけど、ビールとチューハイの缶がいくつかしか入っていなかった。

 今週は忙しくて帰りに買い物もできなかったし、調味料すらない。そもそも、一人暮らしをしてから自分で調味料を買った覚えがないもんね。


 飲み終えた缶をシンクに置いて、歯を磨いた。

 ふわふわした頭でベッドに倒れこんだら、一瞬で意識が溶けた。

***