鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した

「立花さん、申し訳ないけどお先失礼しますね」


 午後三時。産休から時短で復帰したばかりの戸部(とべ)先輩に、ささやくように声をかけられた。


「ぜーんぜん大丈夫です。むしろ戸部先輩が半日でもいてくれるおかげで、めっちゃ助かってます」


 これはお世辞でも何でもなく、本当に助かっていた。

 長谷川に指摘された後輩の質問が全部私に飛んできていたのが、半分以上、先輩に流れるようになったからね。他にも細かい申請系や、確認などを漏らさず拾ってくれるから、感謝しかない。


 それでも先輩が申し訳なさそうにしてるのは、長谷川のイライラがこっちに向くことを懸念してのことなんだろう。


 なんだかなー。

 そんなのお互い様だし、そういう雇用形態なんだから、どっちも気にしなくてもいいと思うんだけど。


 戸部先輩から、やり残しのタスクを引き継いだ。

 それだって、すごくきれいにまとまってるから、私は中身を確認してメールしたり、書類にコピペで足していくだけでいい。


 ほんと、みんな気にしすぎなんだ。

 その後も、長谷川に指摘された後輩が涙目で修正してるのを助けたり、長谷川がカリカリ叱ってるのを、あんまりだったら割って入ったりしていた。


 ……私が忙しいの、長谷川のせいな気がしてきたな。


「立花せんぱーい」


 後輩の(ゆかり)くんが書類片手にやってきた。


「なに?」

「さっき先輩がメールしてた原価が変わったってやつ、これも対象になります?」

「自分で……あ、権限なくて見られないのか。ちょっと歌って待ってて」

「何歌います?」

「もののけ姫」

「はりつめたーゆみのー」

「めっちゃ上手い。ああ、これだ。えっとね、それは大丈夫だけど、同じお客様のこっちの製品が……」


 こういうバカなことばっかりやってるから、長谷川に怒られてる気がしなくもない。