鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した

 午後は、長谷川から回された仕事に手をつける。


 紫くんの企画書は相変わらず荒い。詳細を詰めてほしいところに赤を入れて、ついでに誤字脱字もチェックする。ていうか、テキストエディタの誤字脱字チェック機能、何やってんの。

 ……いや、これたぶん使ってないな。それだけで指摘、半分くらい減るのに。


「立花せんぱーい。あれ、それ、俺が長谷川さんに送ったやつ。どうですか? ばっちりっしょ」


 ひょこっと顔を覗かせた紫くんは、自信満々に言った。いや、この凡ミスだらけの企画書のどこにそんな自信あるの。


「は? 全然ダメだけど?」

「えー、何がですか」

「まず日付と曜日がずれてる。誤字脱字が多い。ここの企画の説明がふんわりすぎる。明日締め切りでしょ? ていうか……」


 ばーっと指摘したら、紫くんはあからさまに拗ねた顔になった。


「ちょっと紫くんのパソコン見せて」

「えっ、立花先輩が作り直してくれるんですか」

「んなわけないでしょうが」


 確認したら、案の定テキストエディタの誤字脱字チェックも校正機能もオフになってるし、カレンダー機能は同期すら切れていた。どっちも設定を直して、ついでに使い方も教える。


「あざす、立花先輩!」

「一時間で企画書の指摘直して、私だけに送っておいて」

「えーめんど、いえ、やります。今すぐやります」


 調子のいい後輩をじろっと睨んで、自分の仕事に戻った。


 お客様の情報取りまとめは、そこまで大変でもない。

 ずっと付き合いのある相手だから、今の担当者さんの好みさえ押さえておけば十分だ。

 まとめて長谷川に送り返したあと、紫くんから誤字脱字と荒すぎる箇所を直した企画書が飛んできた。それにもう一度赤を入れて、長谷川へ転送する。


 時計を見ると、定時を少し回ったくらい。

 よしよし、週頭としては順調な滑り出しだ。


 荷物をまとめて、ホワイトボードにさっさと「帰宅」と書き込む。そして課長と目が合う前に、大きめの声で、


「お疲れさまでした、お先失礼します!!」


 と言って会社を出た。