並んで歩くなら、あなたと

 先輩は自転車だけど、並んで歩いて公園に向かった。

 カフェの店内は混んでいるから、テイクアウトして、公園のベンチで食べる。暑いけど、木陰だし、風が気持ちいい。


「もうすぐ夏休みも終わりですねえ」

「そうだね。九月に入ると文化祭準備が忙しくなるよ」

「先輩のクラスは何やるんですか?」

「うちは迷路。花菜ちゃんのところは?」

「射的。夏祭りっぽいイメージで、女子は浴衣、男子は甚平着たいってクラスのグループトークが盛り上がってます」


 本当に着るのかはわからないけど、浴衣なら家にあるから着てもいい。

 先輩はきっと「かわいい」「似合ってる」って褒めてくれるんだろうな。


「楽しみだな、花菜ちゃんの浴衣」

「先輩はクラスシャツ?」

「うん、これ」


 見せてくれたのは明るい水色のシャツで、大きくジンベイザメが描いてあった。


「修学旅行で行った水族館が楽しかったんだってさ」

「他人事ですね」

「俺は花菜ちゃんと行きたかったから」

「まだ言ってる」

「一緒に行くまで言う」


 カフェのサンドイッチとレモネードはおいしかった。

 また秋になったら来たいな。

 食べ終えたら、私はバスで帰ることにした。先輩も一緒にバス停に並んだ。


「先輩、夏休みどこか行きましたか?」

「後輩の女の子と図書館デートした。そっちは?」

「私も部活の先輩と図書館で宿題したくらいですね。いつもならおばあちゃんと出かけたりするんですけど、今年はいなかったので」

「今年は?」


 先輩が神妙な顔で首を傾げたから、つい思い出して笑ってしまった。


「母方の祖母なんですが、今年に入ってから体調を崩して……」

「それは……」


 不安そうな顔をされたけど、そんな深刻な話じゃない。むしろ笑い話だと思う。


「足腰が元気なうちに、おじいちゃんとの思い出の場所に行くって言って、マチュピチュに行きました」

「マチュピチュ!?」

「はい。そろそろ帰ってきます」

「……おばあさん、元気だね?」

「ほんとですよ」


 次はピラミッドを見たいと言っていたから、あわよくば私も行きたい。

 そんな話をしているうちに、バスが来た。


「じゃあ、先輩、また明日」

「うん、また明日」


 先輩の手が伸びてきて、振っていた私の手に重なった。

 指が絡んでそっと握られたけど、私が握り返す前に離れていく。

 先輩はふにゃっと笑って自転車に乗り、帰っていった。