並んで歩くなら、あなたと

 藤也と一緒に学校まで送ってもらい、中庭に着いたところで、世菜先輩が走ってきた。


「おはよ、ございます……っ」

「どうした、そんなに急いで」

「す、みません、追いつけなくて」

「別に走らなくても、私いつもここで先輩のこと待ってるじゃないですか」

「そうなんだけど!」


 走り過ぎて顔を赤くした先輩が息を整えている間に、ホースとじょうろを出してきた。

 来週には苗の植え替えがあるから、そろそろはびこった雑草をむしったり、絡まっているツルを外した方がいい。

 ゴミ袋とハサミも取り出して、世菜先輩と一緒に裏門へ向かった。


「あのさ、聞いていい?」

「なんですか?」


 ホースを蛇口につないでいたら、先輩が低い声を出した。

 見上げると、しょげたような顔をしている。


「……なんで、部長と一緒だったの?」

「朝、パパと一緒に市場に卸に行ってたんです。藤也もいたから、藤也のお父さんが学校まで送ってくれたんですよ」

「そっか」

「相変わらず面倒な人ですね」

「ごめん」

「顔がかわいいから、まあいいんですけど」


 手を伸ばして、先輩の前髪を避けた。

 暗い色の瞳に日が差して、キラッと光る。

 その光の奥に呆れた顔の私が映っていた。


「世菜先輩、私のことかわいいって思います?」

「思います」

「他に、何か考える必要あります?」

「……ないです」

「ね」


 先輩にホースを渡した。

 私もじょうろで水をまく。陽射しがきついから、たくさん水やりをしないといけない。その後は雑草とツルをむしって、なんとなく片付いたら、ほかのところに応援に行く。

 全部終わったら、藤也に報告して今日はおしまい。

 来週から今植わっている苗を掘り起こすから、明日からはその準備になるかな。

 そんなことを考えていたら、藤也が声をかけてきた。


「花菜、帰りどうする? 自転車ねえだろ」

「藤也は?」

「じいさんが剪定帰りに拾ってくれる。桔花(きっか)蓮乃(はすの)は自転車で来てるから、自分たちで帰るって言ってた」


 じゃあそれに乗せてもらおうかと思ったら、後ろから先輩がのぞき込んできた。

 何か言え。


「先輩に送ってもらう」

「はいよ」


 藤也は笑って頷いた。

 振り向いて先輩を睨んだら、嬉しそうで、しょうもないな、この人。


「先輩、構ってほしいのを察させるのはよくないですよ。ちゃんと声をかけてください」

「ごめん。誘おうと思ってはいたんだよ」

「じゃあ普通に誘ってください。お昼、食べていきますか?」

「いいの?」

「いいですよ。先輩と食べるの楽しいから」

「やった。じゃあ駅の向こうにある公園に園芸カフェができたから行きたいな」


 それこそ、普通に誘ってくれればいいのに。