逆に聞き返すと、浩斗は眉根を寄せる。
その表情を見て、言わなくても彼はもう大体を知っているのだな、と察した。
「そのあと偶然、和賀さんにも会いました」
「圭吾に?」
「はい。付き合ってほしいって」
浩斗が目を見開く。
「……なんて返事したんだ?」
結衣はグラスを指先でなぞりながら、ゆっくりと口を開く。
「……和賀さんって、すごく真面目で、優しくて、親切で、趣味も合うんです」
「……そうか」
浩斗は短く返し、黙り込む。沈黙がふたりの間に落ちた。
時計の針が静かに進む音がやけに大きく感じる。
結衣はグラスをテーブルに置き、浩斗を見つめた。彼はグラスを持ったまま肘を膝につき、項垂れていた。
なんて顔をしているんだろうと思う。いつもの自信にあふれた浩斗の姿からは想像もできないような、消沈した表情だ。
「でも、お断りしました」
浩斗がパッと顔を上げる。
「どんなに優しくされて、好かれても、なぜか誰かさんの顔ばっかり浮かぶんです。結局、私の心は浩斗さんのことでいっぱいみたい」
彼はまるで信じられないものでも見るかのような目で、結衣を見つめていた。



