俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

 裕美はくすっと笑う。その瞬間、頭が真っ白になった。

(結衣!)

 応接室から飛び出して、秘書部のフロアに戻る。見回しても捜している人物──結衣はいない。

「横溝さんは?」

 息を切らした浩斗は、自席で仕事中の成瀬に聞く。

「先ほど外出して、まだ戻っていません」
「どこに行った!」
「そこまでは……。電話してみましょうか?」
「いい。俺が直接電話する」

 浩斗は結衣に電話をかける。呼び出し音が鳴るが、出る気配がない。

「社長、そろそろ次のお約束のために出発するお時間です」

 険しい表情の浩斗に、田端が声を書ける。

(くそっ!)

 浩斗はスマホから、結衣にメッセージを送る。

【今夜、会いたい】

 暫くすると、ピコンとスマホの通知音が鳴った。

【わかりました。私も話したいことがあります】


 ***

 程よく冷えたワインボトルと共に、グラスが置かれる。

「悪い。本当は、お洒落な店にでも連れて行きたかったんだが──」
「いえ、構いませんよ。お洒落な店より、こっちのほうが気が楽ですし」

 結衣はにこっと微笑む。
 カツンと軽くグラスをぶつけてから一口飲む。浩斗の自宅のワインセラーにあるお酒は、どれも飲みやすくて美味しい。

「結衣、疲れてるのか?」

 浩斗が結衣のほうを、心配そうに見る。

「まあ、色々あって──」

 結衣は言葉を濁す。
 今日は、本当に色んなことがありすぎて疲れてしまった。
 普段通りに仕事していたと思ったら、裕美に呼び出されたひどいことを言われ、そのあと圭吾に告白された。さらに、今は浩斗の自宅に来てこうしてお酒を飲んでいるのだから。

「今日の昼、小名木さんと会った?」
「はい」
「どんな話を?」
「どんな話だと思います?」