俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

 店を出た結衣は、とぼとぼと歩き始める。

「結衣さん?」

 すぐに聞きなれた声がして、結衣は顔を上げた。驚いた顔をした圭吾が、こちらを見つめていた。

「どうしたんですか。ほっぺたが赤い」

 圭吾は眉を顰め、結衣に歩み寄る。

「唇が切れて血が出てるじゃないですか。なんでこんなことに?」

 圭吾は鞄からハンカチを取り出すと、結衣の口元を拭う。青色のハンカチに、赤い血が付いていた。

「ごめんなさい。今度弁償します」
「そんなことはどうでもいい。 ちょっとこっちに来て」

 圭吾は結衣を手を引くと、ビルの合間にある広場にあるベンチに座らせる。

「何があったんですか?」
「…………」

 結衣は黙り込む。見下ろす圭吾の視線が頭に刺さった。 

「もしかして、小名木さんから何か言われた?」
「え?」
「結衣さんを見つける直前に、小名木さんのことも見かけたんだ。だから、もしかしてそうかなと思って」

 答えることができず、結衣は視線を泳がせる。

(そっか。小名木さんは浩斗さんの元カノだから、和賀さんとも知り合いなんだ)

 何もかも筒抜けで、嫌になる。

「彼女、浩斗親しくしてたし、それ関係?」

 結衣は少し逡巡してからぽつりぽつりと事情を話し始める。