俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~


「そういう夏希は変わりない?」

 結衣は夏希に聞き返す。すると、夏希は意味ありげな笑みを浮かべる。

「私は、結衣に伝えなきゃいけないことがあって」
「え? 何々?」
「実はね……結婚することになりました!」

 夏希のカミングアウトに、結衣は数秒動きを止めてから「ええっ!」と叫ぶ。思わず大きな声を上げてしまい、慌てて両手で口をふさいだ。

「それって、前に言っていたシェアラで知り合った彼氏?」

 結衣は声をひそめて夏希に尋ねる。

「うん。気も合うし、話していて楽しくて、ずっと一緒にいたいなって思ったの。結衣には早めに報告しておきたかったから、今日時間作れてよかった」

 夏希は照れ気味に説明する。幸せそうな夏希を見ていたら、ジーンとしたものが胸に広がるのを感じた。

「そっかあ……。おめでとう!」
「ありがとう。結婚式はこれから準備するからまだまだ先だけど 絶対に来てね」
「うん。行くね」

 結衣は満面の笑みで頷いた。

 お昼から戻った結衣は、社内イントラで改めて、シェアラの紹介ページを見る。
 結婚式の姿の男女が幸せそうに並ぶ写真を背景に、『きっかけはシェアラでした』とキャッチコピーが書いてある。

(結婚か……)

 仲のよい同期がいざ結婚となって、まだまだ先のことだと思っていたライフイベントが、急に現実味を帯びる。
 あとひと月ちょっとで勝負の期日である半年が来る。このままいけば結衣が勝ち、サイバーメディエーションはシェアラの事業から撤退することになる。
 最初はそれでいいと思っていた。けれど、ここにきて結衣には迷いが生じていた。

(本当にそれでいいのかな。私はマッチングアプリで酷い目に遭ってばかりだったけど、夏希みたいに幸せを掴む人も確かにいるわけで──)

 ずっと主張していた〝マッチングアプリこそ諸悪の根源〟という考えの正当性がわからなくなってきていた。自分はただ単に、マッチングアプリでひどい目にあって逆ギレしていただけなのではないかと思えてきたのだ。

(もし勝負が終わったら、浩斗さんと今みたいに食事に行くこともなくなるのかな)

 ずきっとした痛みが、胸に走る。
 どうすればいいのか、どうしたいのか、自分が自分でわからなかった。