浩斗にとって、結衣と親しくするメリットは何もない。
「身の程をわきまえたほうが、あなたのためよ」
裕美は結衣の肩をとんっと叩くと、化粧室へと消える。ひとりになった結衣は、その場に立ち尽くした。
(浩斗さんが私と付き合う目的は、シェアラの正当性を証明すること。じゃあ、そのあとは? 勝負が終わったら私達の関係はどうなるんだろう)
もしも裕美の言うように浩斗が一番メリットのある選択をするなら、「二度と関わらない」が一番可能性が高いと思った。
「小名木さんなら、平凡な私と違って浩斗さんにお似合いなこと間違いないわ」
結衣はぼそりと呟くと、拳をぎゅっと握った。
***
会議を終えて廊下を歩く浩斗は、頭を悩ませていた。
(裕美と会食に行った翌日から、結衣の態度がよそよそしい。いったいどうしたんだ?)
シェアラでメッセージを送っても、初期の頃のような事務的な返事が一言来るだけだ。裕美との関係を誤解されないように敢えて結衣を連れて行ったのだが、それがいけなかったのだろうか。
「浩斗」
名前を呼ばれて振り返ると、そこにいたのは圭吾だった。
「圭吾! 今日は打ち合わせか?」
「ああ。さっき終わったところだ」



