俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

「次は何を飲む? 浩斗は辛口の日本酒が好きだから、これはどうかしら?」
「ありがとうございます。でも、自分で選ぶから気を遣っていただかなくて大丈夫ですよ」
「もう、その喋り方やめてよ。私が接待強要しているみたいじゃない」

 裕美はぷくっと頬を膨らませる。

「滅相もない。そんなこと、思っていませんよ」

 にこっと、浩斗は作ったような笑みで微笑む。すぐ近くでそのやり取りを見ている結衣は、震えあがった。

(なんなのこの空気……)

 押せ押せの裕美と淡泊な浩斗に温度差がありすぎて、とにかく居心地が悪い。裕美のような美人に言い寄られたら誰だって少なからずデレデレしてしまいそうなものだが、浩斗にはその気配が全くなかった。
 そのとき、浩斗が結衣の前に置かれた料理を見る。

「全然食べていないじゃないか。俺達に遠慮せずに食べろ」
「あ、はい。ありがとうございます」

 結衣はお礼を言う。実は、手を付けていいものか考えあぐねいて、まだ一口も食べていなかった。

(でも、空気じゃ味なんかするわけないよね……)

 この部屋の居心地が悪すぎて、とても食事という気分じゃない。けれど、料理に罪はないので、結衣は一口食べる。

「ん……これ、美味しい!」

 素材の味もさることながら、味付けも優しくて食べやすい。
 家庭では普段食べられない美味しくて凝った料理に、結衣の表情筋は緩む。

 すると、すぐ近くからくくっと笑いをこらえるような声がした。横を見ると、浩斗が肩を揺らしている。

「ずいぶん美味しそうに食べるな」
「だって、美味しいですもん」

 子供っぽかっただろうか。羞恥心が湧いてきて、頬が赤くなるのを感じる。

「ずいぶん仲いいのね」

 棘のある声がしてハッとすると、裕美が冷ややかな視線を結衣に向けていた。