俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~


「あれ? お客様ですか?」

 結衣が外出前に確認したときは、今日はもう来客予定はなかったはずだ。不思議に思って成瀬に尋ねると、彼女はあからさまに顔をしかめた。

「そうなのよ。突然会いたいって言い出すなんて、こっちの身にもなってほしいわ」

 どうやら、成瀬はこの来客を歓迎していないことは理解した。

(お客様がいるなら、浩斗さんも私が来ても気にしないだろうし)

 浩斗と顔を合わせることに対して気まずくなっている結衣には、お茶出しくらいがちょうどいい仕事かもしれない。

「わかりました。行ってきますね」

 結衣はトレーを受け取ると、それを持って社長室へ向かう。

「失礼します。お茶をお持ちしました」

 ドアを開けると、そこには小名木裕美の姿があった。
 裕美と目が合い、結衣はドキッとする。裕美はすぐに結衣から目を逸らし、浩斗に話しかけた。

「ねえ、今日このあとは予定ないんでしょう? 続きはゆっくり食事でもしながら話しましょうよ」

 少し甘えるように、裕美は誘う。浩斗は数秒逡巡する様子を見せたが、「わかりました」と言った。

「久しぶりに浩斗と食事できるなんて嬉しいわ。私、和食がいいな」

 喜ぶ裕美の声の聞きながら、胸の中にもやもやしたものが広がるのを感じた。

(ふたりきりで食事に行くのかな。私には、和賀さんと会うなとか言ってきたくせに)

 けれど、裕美の父親が社長であるウィズンコーポレーションはサイバーメディエーションにとって、大事なお客様だ。浩斗が裕美を無下にできないのも理解できた。