俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~


「……結衣さん、何かあった?」
「え?」
「なんとなく、元気がない気がして」

 鋭い指摘に、ぎくっとする。

「そんなことないですよ」

 結衣は笑ってその場をやり過ごそうとした。一方の圭吾は、少し考えるような表情を見せる。

「最近、隣駅に中国茶専門の喫茶ができたんだけど、知ってる?」
「え? そうなんですか?」
「うん。工芸茶なんかもたくさんあって結構本格的なんだ。結衣さんはきっと好きだと思うから、行ったら気分転換になるかも」

 にこっと微笑む圭吾を見て、結衣はハッとする。はっきりとは言わないが、結衣を元気づけようとしてくれているのだろう。必要以上に追及してこない優しさが身に染みた。
 圭吾はエレベーターを降りると、持っていた紙袋を結衣に返す。

「席まで持って行っていってあげられなくてごめんね」
「いえいえ。ここまで運んでくださっただけでも大助かりです」

 結衣がお礼を言うと、圭吾は口元に弧を描く。

「あとでお店の情報送るよ。あんまり無理しないようにね。じゃあ、また」

 片手をあげる圭吾の背中に向かって、結衣は頭を下げる。

(和賀さん、親切な人だな)

 沈んでいた気持ちが、少しだけ上向いた気がした。

「ただいま戻りました」

 結衣は成瀬に声をかける。すると、彼女はハッとした顔をした。

「横溝さん、いいところに戻って来たわ。社長室にこのお茶をお持ちして」

 結衣から菓子折りを奪うと、成瀬は代わりにトレーに載ったお茶を押し付けてきた。