俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~


「はあ、戻りたくない」

 両手に紙袋を持った結衣は肩を落とす。
 今日の午後、浩斗に外出の予定はなかった。ということは、戻ったら顔を合わせてしまうかもしれない。
 しかし、ただお菓子を買いに行くだけなのに二時間も三時間も時間をつぶすのはさすがになしだろう。
 
 結衣はとぼとぼと会社への道を歩く。

(あからさまに視線を避けちゃって、悪いことしちゃったかな)

 大人げない態度だったかと反省する。
 そのとき、背後から「結衣さん?」と声をかけられた。

「え? 和賀さん?」

 そこには、和賀がいた。結衣は驚く。

「会社に向かっているところ?」
「はい」
「じゃあ一緒に行こう」
「え?」
「サイバーメディエーションの事業拡大に伴って、僕もサブ担当で入ることになったんだ。今日は財務部にお邪魔して打ち合わせの予定」
「そうなんですね。お疲れ様です」

 結衣は納得する。圭吾の勤務先であるネクストリンク会計事務所はサイバーメディエーションの顧問会計事務所だ。
 一瞬、浩斗に仕事以外で連絡を取るなと言われた言葉が頭をよぎる。
 けれど、今の圭吾は仕事のためにここにいるわけだし、結衣は彼に偶然会っただけ。問題ないだろうと思い直す。

「重そうだね。持つよ」
「え?」

 圭吾の視線は結衣の手元の紙袋に向いていた。今さっき買ってきた、取引先へのお土産の菓子折りだ。

「いえ、大丈夫ですよ」
「遠慮せずに頼ってほしいんだけどな」

 にこっと微笑んだ圭吾は、結衣からひょいっと紙袋を取り上げる。そして、結衣のほうをちらっと見た。