俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~


 仕事中、隣にいる成瀬が時計を見る。

「そろそろ田端室長と社長がお戻りになる頃ね」

 社長が戻ると聞いて動揺した結衣は、肘で書類をデスクから落としてしまう。

「ちょっと大丈夫?」
「大丈夫です。すみません」

 結衣は慌てて床に散らばった書類を拾い集める。

(昨夜あんなことがあって、どんな顔して会えばいいの)

 圭吾からのメッセージがもしあのとき届かなかったら、きっと結衣と浩斗は一線を越えていただろう。

(私って浩斗さんが好きなのかな?)

 出会った当初のような嫌悪感はない。けれど、男性として好きかと言われたら確信が持てない。
 なによりも、もう色恋沙汰で傷つくのが嫌だった。

(今は会いたくないな)

 結衣はすっくと立ちあがる。

「私、明日使用する手土産を買いに行ってきますね!」
「え? ありがとう」

 成瀬は結衣の突然の申し出にやや驚いた様子だ。結衣は構うことなく、カバンを手に持つと執務室の出口に向かう。

(あっ)

 結衣が出る一足先に、出入り口が開く。ちょうど入ってきたのは、田端と浩斗だった。

(一足遅かった)

 浩斗と視線が絡む。浩斗に微笑みかけられ、結衣は咄嗟に視線をそらして頭を下げた。
 顔をあげると少し傷ついたような浩斗の表情が見えたが、結衣は気づかないふりをしてそのまま外に出た。