俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

 動揺する結衣に対し、成瀬は落ち着いた様子だった。

(聞かれていた? 嘘でしょ?)

 結衣はさーっと青くなる。
 成瀬は仕事に厳しいと有名だ。「上司と色恋沙汰になるなんて──」と説教されることは容易に想像ができた。

「あの…これには深い訳があって──」

 あの社長が変な勝負を持ち掛けてきたせいなんです!と言いたいが、言ってもいいものなのだろうか。判断が付かずに言い淀んで着ると、成瀬は結衣を見つめて小首を傾げた。

「付き合っているんでしょ?」
「つ、付き合ってないです!」
「別に隠さなくていいわよ」

 成瀬はふうっと息を吐き、髪の毛を後ろに流す。

(あれ? 怒っているわけじゃない?)

 予想外の反応に、結衣は驚いた。成瀬なら、絶対に『秘書としての自覚が足りない』と言って怒ると思っていたから。

「私、横溝さんが社長の恋人だとしても甘くする甘やかす気はないから」
「え?」
「仕事よ。浮かれてないでちゃんとやってよね。ただでさえ忙しいんだから」

 ツンとした調子で言い放つ成瀬に、結衣は呆気にとられた。
 てっきりいびられると思っていたので、拍子抜けだ。
(いや、そもそも恋人じゃないんだけど。でも……なんだか成瀬さんらしいな)

 結衣は苦笑する。結衣には、成瀬は仕事ができてさばさばいている反面、浩斗にただの上司以上に向ける以上の感情を持っていそうに見えた。
 どんな心情の変化が起きたのかはよくわからないが、結衣にとって好ましい変化であることは確かだ。