俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

「水、もっと飲むか?」
「大丈夫です」

 結衣は首を横に振る。

(まさか阿部くんが、私から会社の情報を盗もうとしていたなんて──)

 久しぶりに再会した大学の同窓生がそんなとんでもないことを企んでいたなんて夢にも思っておらず、ショックだった。もしあそこに浩斗が助けに来なかったら、自分はどうなっていたのだろうと思うとぞっとする。

「社長。今日はありがとうございました。ご迷惑をおかけしました」
「本当にな」

 浩斗、本当に手がかかると言いたげに、苦笑い。

「申し訳ありません」

 俯く結衣は、ぎゅっと自分の体を抱きしめる。

「……私、男性を見る目がなさすぎですね」
「何をいまさら──」

 安心したせいか、感情が堰を切ってぽろぽろと涙が零れてきた。

「結衣……」

 次の瞬間、結衣は浩斗に力強く抱きしめられた。

「社長?」
「ああ、お前は本当に男の趣味が悪すぎる」

 浩斗はそこで一呼吸置くと、結衣を見つめる。

「だから、大人しく俺にしておけ。お前が好きだ」

 驚いた結衣は、目を見開く。

「結衣、キスしていいか?」
「……だめです」
「したい。嫌だったら、押し返せ」

 ゆっくりと浩斗の顔が近づき、唇が重なる。
 どうせ結衣の意志なんて聞くつもりなかったんじゃないかと思ったが、そのキスは想像以上に優しかった。結衣が胸を押し返せば、きっとやめてくれるだろう。

 でも──。

 結衣は浩斗の首に腕を回す。
 今はこのぬくもりに、浸っていたかった。