俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

 阿部はさもおかしいと言いたげに笑う。体調がおかしいこともあって、結衣の抵抗は全く抵抗になっていない。
「誰か助けて! 社長!」
 半泣きで叫んだそのとき、すぐ近くで「その手を離せ」と低い声がした。結衣を押さえつける阿部の手首を握るのは、浩斗だ。
「……社長?」
 なんでここに浩斗がいるのか理解できず、結衣は夢を見ているのかと思った。呆然とする結衣を浩斗は抱き寄せる。
 さっき、阿部から抱き寄せられたときは嫌悪感しかなかったのに、今は安心感に包まれた。
 浩斗はキッと阿部を睨みつける。すると、阿部はさも困ったように肩をすくめた。
「榊原社長。そんな怖い顔して突然どうしたんですか? デートの邪魔をするなんて、無粋じゃないですか?」
「結衣に何をしていた?」
「ちょっと体調を崩していたから休憩しようと思っただけですよ」
「休憩? 結衣を利用して、サイバーメディエーションの競札情報を不正に入手しようとしていたのだろう?」
「なんのことですか? そんなことするわけないじゃないですか」
 阿部は何を言っているのかわからないと言いたげに、両腕を広げた。