俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

 結衣は抵抗しようとしたが、力がうまく入らない。
(私、どうしちゃったんだろう)
 だんだんと薄れそうになる意識を、必死に保つ。
「ほら、タクシーに乗って。うちに行こう」
「……阿部君の家?」
 阿部が、ふらふらする結衣をタクシーに乗せようとする。
(だめ、帰らなきゃ)
 帰らないと、きっと後悔することになる気がした。
「ごめん、私帰る。カバン返して」
 結衣は阿部が持っている結衣のカバンを返してもらおうと、手を伸ばす。
「この状態で帰る? 無理だよ」
「無理じゃないから返して」
 本当は自分でも、無事に帰れる自信がない。けれど、それ以上に、阿部とこのまま過ごしてはいけないと頭の中に警鐘が鳴っていた。
 なおもタクシーに乗らずに抵抗していると、阿部がイラっとしたように表情を険しくする。
「優しくしているうちに言うこと聞いてくれないかな? 貴重な情報源になりそうなのに、今さら逃がすわけないだろ。横溝さんが裏切ったって知ったら、あの社長どんな顔するかな?」
 勝ち誇ったような笑みを浮かべる阿部を見て、ぞっとした。
「嫌っ!」
「だから、逃がさないって言っただろ?」