俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

 そこまで考えて、ハッとする結衣。

(どうしてここであの人が)

 慌てて頭の中から浩斗を消し去ろうとする。
 けれど、消せば消そうとするだけ浩斗の顔が思い浮かんでしまうのはなぜだろう。それに──。

 キスをされたとき、決して嫌じゃなかった。

 怒ったのはキスをされたことじゃなくて、まるで結衣が尻軽で誰にでも愛嬌を振りまくかのように責められたからだ。
 考え事をしながらフラメンコを眺める結衣の横で、阿部は結衣の横に置かれたカバンをちらっと見る。

「そのかばん、邪魔じゃない? こっちに置くけど」
「え? ありがとう」

 結衣はにこっと笑うと、カバンごと持ち上げて阿部に手渡す。

「あと、これがおすすめのスペインワイン」
「ありがとう」

 結衣はありがたくそれを受け取ると、一口飲む。

「あ、美味しいかも」
「よかった。ボトルで購入したから好きなだけ飲んでよ」
「うん、ありがとう」

 結衣は勧められるがままに、酒を飲む。体に異変を感じたのは、飲み始めて一時間ほどした頃だ。

(なんか酔ってきたかも……)

 ここまでペースを落とさずに飲んできたのだが、急激に眠気が襲ってきたのだ。