俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

  ***

 ──体が鉛のように重くて、思うように動かせない。

(苦しい。頭が痛い……)

 熱にうなされている浩斗がうっすらと目を開けると、枕元に人影が見えた。

「お母さん?」
「全く。今夜はA商事のパーティーなのに。なんでよりによってこんな日に」

 まだ熱が下がらない浩斗を見下ろして、母親はため息を吐いた。

「あ……ごめんなさい」

 ぎゅうっと胃が締め付けられるような痛みが走る。
 いい子にできなかったから、自分は母親を怒らせてしまったのだろうか。そんな不安が込みあがる。

「今夜は出かけるからお父さんもお母さんもいないからね。家政婦の森さんが来てくれるから、ちゃんと寝て明日までに治すのよ。明日は英語教室があるんだから」
「はい」

 浩斗の返事を聞いた母親は、くるりと体を回して部屋を出ていく。浩斗はその後姿を、朦朧としながら見送った。

(行かないで、お母さん──)

 大声で呼び止めたいのに、声が出てこない。
 もし言ってしまえば、母親は自分に幻滅してしまうから──。



 ハッと、目を覚ます。見慣れた白い天井が見えた。

「……夢か」

 浩斗は顔を覆い、はあっとため息をつく。

(ずいぶん昔の夢を見たな)

 ベッドの上で、上半身を起こす。着ているパジャマは汗でびしょびしょになっていた。

(だいぶ楽になったな。今、何時だ?)

 時計を見ると、午後一時半を過ぎていた。

「……しまったっ!」

 今日は取引先に伺うことになっていたのに、大寝坊だ。

 勢いよく起き上がると、頭がくらっとして体がふらつく。

(まずは水でも飲むか)

 リビングに行くと、「あ、社長! もう体調は大丈夫ですか?」と明るい声がした。なぜかそこには、愛犬と戯れながら仕事をしている結衣がいる。