俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

「はい。ありがとうございます」

 結衣は素早く車の助手席に乗り込む。運転席に座る浩斗の髪からは、水がしたたり落ちていた。

「社長、ちゃんと拭かないと風邪ひきます」

 結衣はカバンをがさごそと漁ると、持っていたタオルハンカチを取り出す。浩斗の頭を、両手でごしごしと拭いてあげた。

「よし。これで大丈──」

 これで大丈夫、と言いかけた結衣はタオルの合間から見えた浩斗の視線にドキッとする。

(近い……)

 両手で頭を拭いてあげているのだから当たり前だが、思った以上に近い距離に動揺を隠せない。結衣はとっさに浩斗から距離をとる。

「拭き終わりましたよ。行きましょっか」
「ああ、そうだな。拭いてくれてありがとう」
「どういたしまして」

 答えつつ、結衣は俯く。

(なんかいい雰囲気になってるような気がしたなんて、私ってばどうかしているわ)

 相手は、榊原浩斗だ。俺は誰も好きにならない、だなんて、自信満々に言い切ってしまう人なのだ。
 結衣はふうっと息を吐く。隣に座る浩斗の頬がほんのりと赤くなっていることには、気づかなかった。