俺様辣腕社長の甘い執愛~マッチングアプリなんて信じません!~

『誰にだって得意不得意がありますし、知らなかったことはこれから覚えればいいじゃないですか。失敗もいい思い出になります』

 結衣にとってはなんでもないような言葉だったのかもしれない。けれど、巨大企業の経営者一族である浩斗にとっては、新鮮だった。

『榊原家の者は周囲に劣ることなど許されないのよ』
『常に一番でいなさい』

 教育熱心だった母親は、ことあるごとに浩斗にそう言って聞かせた。だから、浩斗にとって『できない』と白旗を上げるなど許されないことだった。

 それなのに、結衣は笑ってそれを許してくれた。
 そして、そのときの結衣の笑顔は──。

 そのとき、社長室のドアをノックする音がした。

「失礼します」

 入室してきたのは、ちょうど浩斗が考えていた相手──結衣だった。

「君が持ってくるなんて珍しいな」

 一瞬動揺しそうになったが、浩斗は何事もないように結衣に声をかける。

「今日は成瀬さんがお休みなので」

 そこまで言って、結衣はハッとしたような顔をする。

「いつものコーヒーメーカーなので、味も成瀬さんと同じですよ?」