ワンルーム、きみと小さな海をみる




その日の昼下がり、町から帰ってきたアオさんを出迎える。



「おかえり。ね、ね、例のアレ買えた?」

「買えたよ。これだろ?」

「これだー!ありがとうアオさん!」



これはアイスクリームというらしい。

以前、アパートの下を歩いていたヒトが食べているのを何度も見かけた。

みんなおいしそうに食べているからずっと食べてみたかったんだよね。


はわ…となりながら受け取ったアイスクリームは氷のように冷たい。

おそるおそる口に含むと、ミルクの甘さが口いっぱいに広がった。




「はわ…」



あまりにも美味しすぎる。

ハンバーガー、ピザ、フライドチキン、アイスクリーム。ヒトの世界は危険なものがいっぱいだけど、おいしいものもいっぱいだ。


感動していると、アオさんがわたしの口の端をぬぐってくれた。




「あ、ありが……」

「ん。ひさしぶりに食べたら甘いな」

「……」

「なあ……うわ、どした。なんで赤くなってんの」

「なんでもないです」



もしかしてアオさんって、だいぶ天然の人魚たらしなのでは?

こんなのされたら世の人魚みんな落ちちゃうよ。

ううん、人魚だけじゃない。きっとヒトの女の子もアオさんの虜になるだろう。


そうなったらきっとわたしに勝ち目はない……。