アオさんがため息まじりに言う。
「話せることはもう全部話したけど。これ以上話すことはない」
「わたしはある。そのままでいいから、少し聞いてほしい」
それから、わたしはアオさんが好き、と切り出した。
「おまえ、こんなときに──」
「やさしいアオさんとそうじゃないアオさんがいるとして。どちらかを選べと言われたら、わたしはやさしいアオさんのほうが好き」
それは言われずともわかっているのかアオさんは口を出してこなかった。
わたしは少し息を吸ってから、続ける。
「だけど、今目の前にいるアオさんを形作っているものにそうじゃないアオさんもいるのなら、わたしはそのアオさんのことも否定しない。
もちろん殺しは肯定しないよ。だけど……」
あの日、迷わず差し伸べてくれた手を思い出す。
どうしても、あなたが誰かを傷つけるようなひとには思えなかった。
それにまだ話してないことがあるんじゃないかと思う。
「世界中の人間がアオさんのことを嫌って、否定したとしても、わたしはずっとアオさんの味方でいる。
たとえ善人じゃなかったとしても、わたしはあなたのことが好きだよ」
ヒトの子が語った過去はたしかに真実なのかもしれない。
それでも、わたしは。
アオさんに生きてる価値がないとも、出来損ないだとも思わない──絶対に。



