それから男のヒト──アオさんは絡まった網をちょっとずつ外していってくれた。
その間、お喋りが好きなわたしは自分がこうなった経緯を聞かれるでもなく話した。
他の人魚はみんな歌がうまいのに、わたしだけ絶望的に下手なこと。
みんなに隠れて歌の練習をしていたら、やってきたイルカの群れに四方八方からつつかれ追いかけ回されたこと。
あわてて逃げていたら迷子になって、そのうち海に漂っていた網に絡まってしまったこと。
「で、この入り江に打ち上げられました」
「そりゃずいぶんな冒険譚だな」
「最初に目が合ったのがあなただったの」
かくん、と引っぱられていた髪が自由になる。
わたしはふるふると頭を振るい、あらためてアオさんを見上げた。
「この辺りのひと?」
一応、とアオさんは言った。
「俺もこの町には数ヶ月前に来たばっかだけど」
どうやら近くに町があるらしい。
いつも賑わっている港や市場があるので、わざわざこんな町外れの入り江に来るヒトはほとんどいないんだという。
そんな中、わたしがアオさんに見つけてもらえたのは不幸中の幸いだった。



