その後もただひとり、砂浜に向き合う彼を見ているうちに、わたしの心にも少しずつ変化が生まれはじめた。
どんなひとなんだろう。
ふくふくと膨らむ好奇心が恐怖よりも勝ったのは、彼の近くにある岩の陰からちいさな赤い影が出てきたときだった。
か、カニだ!アカテガニだ!
カニがちらりと彼を見上げ、彼もカニに気づいた。
「でけーカニ」
うわ、うわーッ見つかってる!
いつか知り合いの人魚が言っていた。
ヒトは魚よりもエビやカニのほうが喜んで食べるらしい、と。
そしてカニはエビよりも動きが鈍いのでよく捕まっている。
おいおいという顔をしたアカテさんが逃げようとして、焦ったのか足を滑らせコロンと裏返ってしまった。
ああなってしまえばカニはなかなか起き上がれない。
死を覚悟して動かないでいるカニを彼が掴んだ。
あのカニは今すぐにでも食べられてしまうだろう。
で、きっと、そのあとはわたしも見つかって──



