「ヱ?」
「俺が好きとかどうとか……言っとくけどそれ、吊り橋効果ってやつだから」
「吊り橋効果?」
「初めて会ったときあんた死にかけてたろ。そんときの不安やら興奮から引き起こされたドキドキが、たまたま居合わせた俺への好意だと勘違いしてんの」
「居合わせただけじゃない……あなたはわたしを助けてくれたし、この気持ちは勘違いでも嘘でもないよ。本当に好きだもん。アオさんはわたしのこと好き?」
「海じゃ本人に訊くのが普通なのか?それともお前がそうなだけか?」
「わかんない。みんな、好きな人ができたら魔女に頼んですぐ両想いにしてもらうから」
閉じられたシャワーカーテンの向こうから「魔女だあ?」という声が返ってくる。
最初こそ気遣ってか外で済ませていたアオさんも、数日たてば面倒になったのか堂々とわたしの前でシャワーをするようになっていた。
ちなみにこちらとしてはそのほうが嬉しい。
アオさんといっぱいお話ができるので。
「そうだよ。海の魔女。ずーっと深く、光の届かないような海底の王宮にひとりで住んでるの」
「辛気くさそうなやつだな」
「まさか。明るくて魚想いな方だよ。なんたってわたしたち人魚の願いをなんでも叶えてくれるんだから」



