一等星センセーション―日陰女子、イケメンアイドルになります!?―


「春蘭堂のプリン。買ってきたから食べれば」


頭に乗っかるものを慎重に手に取る。
冷たくて白いケーキ屋さんの小箱だった。


「これ……!前出てた番組のロケで食べてたやつだよね。
わ、嬉しい!ありがとう」


パッと表情が輝いた私を見下ろして、お兄ちゃんは可笑しそうに片笑う。


帰ってくる度こうしてスイーツを買って来てくれる。
そういうとこだけは、優しい兄なのだ。


「そ。ちなみに、お前の分しかないから」

「……え゛っ?隠さなきゃじゃん!」


喜びから一転。小箱を抱えてわたわたと辺りを見渡す。

ちょこまかと部屋を駆け回ってる間に、いつのまにかお兄ちゃんはリビングのドアに手をかけている。



「じゃーな。俺は来月から3ヶ月は海外だから。
それまでにちょっとはでっかくなっとけよ」

「えっ!?何か言った!?」



その目に焼き付けるように、ドアを閉めるその瞬間まで私の姿を見続けている。

キッチンに駆け込み冷蔵庫の奥底にプリンを隠して振り返った頃には、もういなくなっていた。



あまりの音のなさに驚いていると、玄関とは逆方向の廊下からスリッパを履いた足音が近づいてくる。


キィ、とドアが開く音。
乾かしたての長い黒髪を揺らして、お母さんが入ってきた。


「日向!来てたの?」


湯上がりも相まって紅潮した頬。
嬉しさを隠しきれない笑顔は、ポツンと私だけが残った室内を認識するとすうっと消えた。


「お兄ちゃんなら、帰ったよ」

「そう。あの子ったらいつも突然来るんだから。
連絡しなさいって言っているのに」


はぁっと溜息をつくその顔は、小言を言いながらも結局は可愛い子を許している顔。


“いつもわざとお母さんがいない時を狙って来てる”なんて、絶対に言えない。


「仕事が忙しかったのかも。来てすぐ帰ったから」

「…………」


誤魔化し笑いでしたフォローに、返事は返ってこない。
退屈そうにキッチンに消えて、お気に入りのワインを取り出す。