「最初はキツかったけど――……大丈夫。
南が……」
“南”の名前を聞くと、お兄ちゃんのページを捲る手が止まる。テレビの笑い声が遠のく。
長いまつ毛が頬に影を落とし、物思いに耽るような顔をしていたことに、私は気付かない。
「あっ!え、と。メンバーの1人の人が味方してくれたし。
他の人たちとも、多分ちょっとだけは近づけたから」
“南”って言っても誰だかわからないよね。
……あ。でも。
南が私を知ってたことと、お兄ちゃんの話をした時の一瞬冷たくなった表情を思い出す。
だから、聞いた。
「……そういえば、南とお兄ちゃんって知り合いだったりする?
それがさ、……」
……ハッ!待て待て。
初日に速攻で正体バレたなんて言ったら、何言われるかわからなくない!?
慌てて口をんっと閉じる。
妙な沈黙をテレビの音が繋いでくれてる。
ツッコまれませんように……ドッドッと心臓が波打った。
けれど、何の反応も返ってこない。
――『日向っ!いつか、一緒に――……』
日向の頭には、八重歯を溢して屈託なく笑う少年の姿が浮かんでいた。
一度目を閉じる。
――――。
『なんでだよ、日向……!』
すると、今度は同じ顔が泣きそうに歪んだ表情に変わる。
伏したまつ毛に隠れた瞳が、罪悪感で暗くなった。



